1987 Fiscal Year Annual Research Report
建材の燃焼生成物から見た有害性の評価に関する研究ー生理心理的な効果を中心としてー
Project/Area Number |
61460174
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 進一 東京大学, 工学部, 助教授 (90011220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸谷 孝一 日本大学, 理工学部, 教授 (50010666)
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Keywords | 一酸化炭素 / 空間認知 / 燃焼生成物 / 避難 / 火災 / 生理心理 / シミュレータ |
Research Abstract |
本研究は, 建築物の火災時に発生する燃焼生成物の有害性を生理・心理的な観点から検討することを目的とした. まず, COガスの吸引により生じる脳機能の低下を調べるため, 実験動物の学習機能の低下を測定する実験モデルを開発し, その影響を調べた. その結果, COガスを吸引することにより, 明かに学習機能が低下することが確認できた. そこで現在, 暴露ガスの濃度および暴露時間等の実験条件を多様に変化させ, より豊富なデータを得るための確認実験を進めている. また, 生理・心理的な有害性を検討する際の重要な論点として, 既存の建築空間に頻繁にみられる迷路状の通路空間が上げられる. これは, 火災時の避難安全性を阻害する要因の一つとして極めて憂慮されている. この問題を具体的に論じるには, 空間自体のあり方と人間の空間認知に対する知識が必要である. そこで, 本研究では, 空間の認知混乱要因を検討するためのシミュレーターを開発し, 案内図のあり方と記憶の関係, 通路の曲がり角度のランダム性による方向感覚の混乱, 空間の熟知度と脱出パターンの関係等の様々な実験を行った. その結果, ランダム角度を何度も経験すると, その曲がり角度が90度であったと誤って認識する習性が現れ, 自分の現在位置や空間のあり方を錯覚することが観察された. 直角迷路の場合は, 入口および出口部分の記憶が比較的明瞭であり, ランダム角迷路の場合は, 入口から離れるほど記憶が曖昧になる. また, 案内図のオリエンテーションも空間認知および地図形成に少なくない影響を及ぼすことを可視的に立証した. その他, 様々な実験結果より, 個々の問題点や検討事項を整理している. 現在, これらの実験結果をもとに, 生理・心理的な問題を総合的に検討し, 包括的な表現を期すためのモデル構成に対する研究を進めている.
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