1986 Fiscal Year Annual Research Report
分子線エピタキシー法による金属多層膜・磁性材料の設計と作製
Project/Area Number |
61460199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 良一 東大, 工学部, 助教授 (10107550)
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Keywords | 金属多層膜 / 薄膜作製 / 超格子 / 結晶成長 |
Research Abstract |
分子線エピタキシー法によれば金属多層膜を、その積層周期を原子レベルで正確に制御して作製することができる。磁性体としての金属多層膜は二次元性を示すばかりでなく、磁化が界面効果により上昇することが実験的に見いだされている。本研究では分子線エピタキシー法により様々な金属の組合せで金属多層膜を作製し、その構造と磁気特性の関係を明らかにすることにより新磁性材料開発への指針を与えることを目的としている。本年度は、磁性金属多層膜作製の前段階として、積層周期や結晶の配向性などを正確に制御して金属多層膜を作製するため、蒸着速度、基板、基板温度などの作製条件として金属多層膜の構造との関係について研究した。 磁性体においては極微量の不純物によりその磁気特性が大きく変化する。そのため、現有の分子線エピタキシー装置に四重極質量分折計を導入し、多層膜作製中の真空槽内の残留ガスを分折した。その結果、蒸着中【10^(-9)】Torr台の真空度において残留ガスの主成分は【H_2】でありその他【H_2】O,【N_2】,CO,C【O_2】が認められたが、電子ビーム加熱による蒸着であるためその他の有害元素の存在は検出されなかった。次に各種の金属を正確に制御して蒸着することが可能かどうかテストするために、高融点金属でbccのMoと融点の低いfccのCuを例として、金属多層膜を作製した。繰り返し反射光干渉式膜厚計により校正した水晶振動子式膜厚計により蒸着速度をモニターし、それによって蒸発源とシャッターをコントロールすることにより、積層周期を設定どうりに制御して多層膜を作製することができた。また、基板や基板温度をかえてMo/Cu多層膜を作製し、X線回折によりその構造を解折したところ、サファイアa面上に基板温度40℃で作製した場合に、もっとも積層周期のゆらぎが少なく、結晶の配向性が良い多層膜がえられた。以上の様に磁性多層膜作製の準備は、ほぼ完了した。
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