1986 Fiscal Year Annual Research Report
放射線スペクトル測定データの高分解能化に関する研究
Project/Area Number |
61460244
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中沢 正治 東大, 工学部, 助教授 (00010976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 哲夫 東京大学, 工学部, 助手 (60134483)
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Keywords | 分解能補正 / アンフォールディング / ベイズの定理 / γ線スペクトロメータ / 不確定性情報 / データ処理 / 統計的推定 / NaIシンチレータ |
Research Abstract |
放射線スペクトル測定データのエネルギー分解能を数値データ的に補正向上させる手法を開発し、実際の測定データを模擬したモデルにこれを当てはめその有効性を確認すると共に、データの統計的なばらつきと分解能補正の限界の間に存在する不確定性関係について検討を行った。 真のスペクトル・データは、測定系に固有な応答関数(分解能劣化関数)を通して測定されるが、γ線スペクトロメータにおけるそれは、実測によりピーク近傍ではわずかに非対称性を持つものの、ガウス関数とみなすことができる。それ故、モデル計算においては応答関数をガウス関数とし、実測データのガウス関数のconvolutionで表される成分に対し、分解能補正を行った。また、真のスペクトルは、ライン・スペクトルとし、上記の関数で劣化された理想的なスペクトル・データを基に、これを確率密度関数として種々の統計精度を有する模擬測定データを作成し、これらに対してuntoldingと呼ばれる手法を適用し分解能の補正を行った。本解析に用いたuntolding手法は、ベイズの定理を基本とした確率論的手法のため初期推定値を必要とするが、測定データをそのままこれとして用いた。この種の問題で良く生ずる振動を抑えるために正の相関に相当する不確定性情報もあわせて与えた。 この結果、振動を生ずることなく分解能は向上したが、補正しきれない成分が依然として残った。これは、もともと連続関数である対象をパルス・ハイト分布で扱う上で生ずる離散誤差等のバイアス成分と、測定データが持つ統計精度に起因する分解能の不確定性成分の和であることが分った。統計精度約1%の模擬測定データで分解能は約2.5倍向上した。 尚、以上の計算はマイクロ・コンピュータ(PC-9801XA)で行い、通常のγ線ピーク解析プログラムとほぼ同じ計算時間で行うことができた。
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