1986 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学的酸素発生反応の表面発光分光法による分子論的研究
Project/Area Number |
61470008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中戸 義禮 阪大, 基礎工学部, 助教授 (70029502)
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Keywords | 光酸素発生反応 / 酸化物半導体 / 発光分光法 / エネルギー変換・貯蔵 / 反応中間体 / 二酸化チタン / 光電気化学 / インタカレーション |
Research Abstract |
本研究は、Ti【O_2】等のn型酸化物半導体電極上での光酸素発生反応において反応中間体から発光が生じるという我々の発見をもとにして、この発光のinsitu条件下での詳細な研究により光酸素発生反応の分子論的機構を解明し、更にはエネルギー変換・貯蔵の面から重要な酸素発生反応に対して高活性な電極を見出すことを目的として行なった。まず、窒素レーザーとサンプリング・オシロスコープを用いることによる高感度な発光測定装置の製作については、ほぼ目標を達成した。次に、n型Ti【O_2】電極上での光酸素発生反応の機構に関しては、pHが12より小さい溶液中では、中間体が通常考えられているように電極の表面に生成するのではなく、電極の内部すなわち電極の表面の少し内側に生成するという興味ある機構を見出し、交付申請書に記載した計画を少し変更してこの問題を詳しく調べ、次のような結果を得て、この機構をほぼ確かなものにした。(1)Ti【O_2】に【Cr_2】【O_3】をドープすることにより発光が強く増強されるが、これは中間体がドープされた内部のCrイオンの酸化を通じて結晶内にも生じるためと考えられる。(2)大きいバンドの曲がりの存在下で光をあてて中間体を生成した後に暗時下で見られる中間体と電子との再結合による発光が、バンドの曲がりの大きい段階ですでに現われるが、これは中間体が結晶内部にも存在することを示すと考えられる。(3)Ti【O_2】単結晶においてc軸に垂直な面を電極面としたとき、c軸に平行な面の場合とは異なり、発光が光照射時間とともに強くなる。これはc軸に平行に存在するチャネルを通じて中間体が結晶内に生成することによると考えられる。上述の機構は、光により生じた正孔がTi【O_2】結晶表面に吸着している水酸基イオンを直接酸化できず、このイオンの結晶内への侵入によって初めて酸化できることを示すものと考えられ、酸素発生反応の分子論的機構に全く新しい概念を与えるものとして極めて興味深い。
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