1986 Fiscal Year Annual Research Report
高温固体表面に於ける熱陽イオン生成反応機構の解明と高性能小型熱陽イオン源の開発
Project/Area Number |
61470010
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
河野 博之 愛媛大, 理学部, 助教授 (50006144)
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Keywords | 熱陽イオン放射 / イオン化効率 / 仕事関数 / 吸着 / 残留ガス / アルカリハライド分子線 / レニウム表面 / リチウム原子線 |
Research Abstract |
真空中で高温に加熱したレニウム線の表面にアルカリハライド(LiI,LiBr,またはLiC1)の分子線やアルカリ(Li)の原子線を入射させて、その表面から放射されるアルカリ陽イオン(【Li^+】)の放射量を、いろいろな実験条件(真空度,表面温度,原子分子線の入射密度,表面を高温処理後の経過時間)の下で測定し、各試料の飽和蒸気圧やイオン化効率などを求めた。さらに、これらのデータを、本人が創案した理論によって解析し、吟味と検討を行なった。その結果、(1)本実験には系統誤差がほとんどないこと、(2)イオン化効率の変化には、レニウム表面の仕事関数の変化が大きく関与していること、(3)中温領域(約1400-1700K)に於ける仕事関数の変化は、主として残留ガス分子の吸着に起因すること、(4)しかし、低温領域(約1300K以下)に於ける仕事関数の変化は、残留ガス分子と入射試料原子分子の共存吸着によること、(5)従って、低温領域に於ける仕事関数の変化は、試料原子分子の入射密度にも依存すること、(6)ただし、高温領域(約1800K以上)では、残留ガス分子や試料原子分子の入射に関係なく、レニウム表面は実質的に清淨な表面に保持されること、(7)試料分子の解離度が100%の時には、試料の入射・吸着によって仕事関数はほとんど変わらないこと、(8)しかし、Li原子を入射させると、残留ガス分子(特に酸素)の吸着による仕事関数の増大作用は、ほゞ100%抑制されること、などを突き止めた。また、入射分子の解離度や電離度並びに表面の仕事関数などが、上記の理論式によって合理的に算出されうることも、明らかにした。さらに、低温領域で試料の入射を停止すると、陽イオンの放射量が一時的に増大することを発見すると共に、この現象も又、当該理論によって合理的に説明しうることが判った。 以上の研究成果の中、一部は既に口頭で発表し、その要点は国際誌上で公表または印刷中である(裏面参照)。
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[Publications] H.Kawano;S.Itasaka;S.Ohnishi: Int.J.Mass Spectrom.Ion Processes. 73. 145-155 (1986)
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[Publications] H.Kawano;S.Itasaka;S.Ohnishi;S.Kadota;S.Shigematsu;Y.Yamashita: Int.J.Mass Spectrom.Ion Processes. (1987)
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[Publications] H.Kawano;S.Itasaka;S.Ohnishi: Int.J.Mass Spectrom.Ion Processes. (1987)
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[Publications] 河野博之,重松聖二: 日本化学会中国四国支部・九州支部合同大会講演予稿集. 53 (1986)
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[Publications] 河野博之,山下祐生: 日本化学会中国四国支部・九州支部合同大会講演予稿集. 54 (1986)
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[Publications] 河野博之,門田生: 日本化学会中国四国支部・九州支部合同大会講演予稿集. 55 (1986)