1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61470034
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
渡会 仁 秋田大学, 教育学部, 教授 (30091771)
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Keywords | イオン会合抽出 / 抽出速度 / 界面吸着 / 錯生成速度 / 界面反応 |
Research Abstract |
本年度は,イオン会合抽出における界面の役割について研究し,以下の成果を得た. 1.溶媒抽出系における1,10ーフェナントロリン(phen)錯体の界面吸着 クロロホルムおよび四塩化炭素/0.1MNacl系において〔Fe(phen)_3〕^<2+>が顕著な界面吸着性を示すことを,界面張力測定により見い出した. 有機溶媒依存性より,水相から界面への錯体の吸着性は,phenの分配定数に比例することが示された. Zn(II)あるいはCu(II)を含む系においても特徴的界面吸着現象が見られた. 試薬濃度依存性より,〔Zn(phen)_3〕^<2+>および〔Cu(phen)_2〕^<2+>あるいは〔Cu(phen)_3〕^<2+>の吸着が示唆された. 2.静止系および攪拌系における鉄(II)ー4,7ージフェニルー1,10ーフェナントロリン(DPP)錯体の界面吸着 〔Fe(DPP)_3〕^<2+>の界面吸着に及ぼす対陰イオンの影響を静止系および高速攪拌系において調べた. その結果,いずれの系でも有機相から界面への吸着性は,ClO^-_4<CCl_3COO^-+ュSY.simeq.+ャB^-_r〈Cl^-の順に増大し,クロロホルム相に抽出されにくい陰イオン系,すなわち,水和エネルギーの大きい陰イオン系ほど大きいことが示された. 3.DPPによる鉄(II)のイオン会合抽出速度における界面の役割 標記抽出速度のDPP濃度,鉄(II)イオン濃度および陰イオン依存性を検討した. その結果,(1)抽出速度は生成する錯体の界面吸着により,陰イオンに依存して見かけ上遅くなること,(2)律速段階は1:1錯体の生成過程であるが, この反応が水相で起るとすると速度定数が10^8M^<-1>S^<-1>となり水溶液中での値3×10^5M^<-1>S^<-1>に比べ異常に大きく,したがって界面反応が支配的であることが示された. この研究により,イオン会合抽出速度を評価するには,イオン化学種の界面吸着性の知見が不可欠であることが示された.
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