1988 Fiscal Year Annual Research Report
天然セルロースを用いるアミノ酸ラセミ体の光学分割法の研究
Project/Area Number |
61470039
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Research Institution | College of General Education, Osaka University |
Principal Investigator |
湯浅 精二 大阪大学, 教養部, 助教授 (90029710)
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Keywords | 天然セルロース / アミノ酸ラセヨ体 / 光学分割 / 対掌体 / カラムクロマトグラフィー |
Research Abstract |
昨年度までの研究により、天然アミノ酸及び修飾アミノ酸が、本研究で開発した方法で分割できることが判明した。今年度は該研究の応用と分割機構の理論化のための研究をおこなった。 放射性同位体で標識したアミノ酸ラセミ体(トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン)を実験室で製作し、セルロースカラムクロマトグラフィーにより分離・精製した。それらの完全分割を確認するために、遊離細胞系を用いてタンパク合成をおこなった。このバイオアツセイにより、分割された対掌体は純粋であることがわかった。このように化学合成された放射性同位体標識アミノ酸ラセミ体が分割できたことは従来困難とされていた純粋L体アミノ酸の多量入取への新しい方法が確立されたことになり、今後の応用研究が期待できる。 種々のアミノ酸ラセミ体が該方法によりきわめて好成績で分割されるのであるが、その機構は尚不明である。分割率の大小はアミノ酸の側鎖の大小に比例し、したがってDNP化などの方法によりより大きな分割率を与えるなどの結果を得た。これらの事実は、セルロースによりアミノ酸が認識されるのはアミノ酸の型であることを示唆している。そこで4Kモデルを用いて、アミノ酸の光学認識についてのモデルを提唱した。それによると、LーアラニンとDNPーD-フェニルアラニンの型がより一致を示した。分割の実験に於いてもLーアラニンはDーアラニンよりセルロースとの相互作用が強いが、DNP化されたフェニルアラニンはDー対掌体がより強い親和性を示すので、上のモデルが成立するように思われる。今回の光学認識のモデルは、理的相互作用を第一義的に考え、酵素反応に於けるkeyとLockの関係を光学認識レベルにも適用しようとするものである。今後の研究によりこのモデルをより詳細に検討し、光学分割機構の理論化をおこないたい。
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[Publications] Isoyama,M.,et al.: Intl.J.Radiat.Appl.Instrum.
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[Publications] Tanaka,M.,et al.: Canadian J.Microbiol.
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[Publications] Fukuhara,T.,et al.: Science.
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[Publications] Fukuhara,T.,et al.: J.Mol.Evol.
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[Publications] Fukuhara,T.,et al.: Chromatographia.
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[Publications] Fukuhara,T.,et al.: J.Chromatogr.Sci.
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[Publications] 湯浅精二: "生命の起原" 朝日カルチャーセンター, 240 (1988)