1986 Fiscal Year Annual Research Report
スピン平衡鉄(III)錯体並びにイミダゾレート架橋異核二核金属錯体の磁気的性質
Project/Area Number |
61470047
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大吉 昭 熊本大, 工学部, 教授 (00040379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 尚英 熊本大学, 工学部, 助手 (80145284)
本坊 寿吉 熊本大学, 工学部, 助教授 (80040369)
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Keywords | イミダゾレート配位シツフ塩基鉄【III】錯体 / スピン平衡 / 磁化率 / メスバウアースペクトル / スピン遷移速度 / 分子構造 / イミダゾレート架橋二核銅【II】錯体 / 反強磁性パラメーター |
Research Abstract |
1.イミダゾールまたはN-メチルイミダゾールを軸配位子とするシツフ塩基鉄【III】錯体を合成し、磁化率およびメスバウァー分光法による解析の結果、S=1/2およびS=5/2状態間の中間的電子緩和の新しい例であることを見出した。エチレンジアミン,アセチルアセトンおよびサリチルアルデヒトの1:1:1縮合物であるシツフ塩基と無水塩化鉄【III】を用いてクロロ錯体を合成し、さらに塩化物配位子をイミダゾールまたはそのメチル誘導体によって置換することにより目的とする鉄【III】錯体を合成し、元素分析およびUVスペクトルによってその純度を確認した。スピン平衡挙動を磁化率およびメスバウアースペクトルの温度依存性により研究した。その結果、高スピンおよび低スピン状態間の時間平均メスバウァースペクトルが観測され、スピン遷移速度を算出する理論式により解析した。本研究で提案したメスバウアースペクトルの理論式は実測のスペクトルをよく再現し、298Κで6.7×【10^6】【S^(-1)】,221Κで3.1×【10^6】【S^(-1)】のスピン遷移速度をもつことが判明した。単結晶X線解析法により分子構造を決定し、イミダゾール配位子が、面内配位原子に沿って交差した形状で配向していることを明らかにした。 2.イミダゾール部位を分子内に含む非対稱型四座キレート配位銅【II】錯体と〔1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン〕銅【II】または〔2-〔2-(2-ピリジル)エチルイミノメチル〕ピリジン〕銅【II】との反応により、イミダゾレート架橋二核錯銅【II】錯体を合成した。磁化率の温度依存性を測定した結果、二核構造を仮定した磁化率の理論式と一致することが判明した。二核の銅原子間には、反磁性相互作用が存在することが確認され、反強磁性パラメーターとして、2J=-107.7【cm^(-1)】が決定された。
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