1986 Fiscal Year Annual Research Report
近畿および中部地方の玄武岩質火山岩類の比較岩石学的研究
Project/Area Number |
61470050
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
氏家 治 富大, 理学部, 助教授 (10176662)
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Keywords | 玄武岩 / 島弧マグマ / サブダクションゾーン / マントル物質 / 東北日本弧 / 中部地方 / 近畿地方 |
Research Abstract |
3年計画の初年度にあたる今年は、(1)玄武岩質岩石試料の採集とその顕微鏡観察およびXRFとEPMAによる分析のための試料調製,(2)文献調査,および購入備品の調整等を行った。 (1)のために福井市,長野県上松町,同大滝村,岐阜県小坂町,同坂下町,兵庫県関宮町,同日高町などに出張し、上野玄武岩類,御嶽,乗鞍岳,国見岳,神鍋火山群,田倉火山などの地質概査と岩石の採取を行った。これらのうち、一部のものについては、顕微鏡観察により非変質の試料を選別し、化学分析用粉末試料の調製を終えた。 (2)の成果としては、次のことが明らかとなった。すなわち中部・近畿地方の海溝側に位置する東北日本弧においては、第四紀の玄武岩質岩石の【K_2】O/Ti【O_2】比が、海溝から遠ざかるにつれて約0.2から約1.8まで増大する。同様にRb/Zr比も約0.05から約0.5まで増大する。このことは、島弧マグマを生じるマントル物質の同比が、サブダクションゾーンに由来する流体相の影響によって同様に変化していることを意味する。さらに海溝から離れて位置する中部・近畿においては、データ数が少なく不確実であるが、玄武岩の【K_2】O/Ti【O_2】比が約0.5-1.0である。このことは、中部・近畿地方下のマントル物質が東北日本の背弧側におけるほどには強いサブダクションゾーンの影響を受けていないことを暗示する。すなわちサブダクションゾーンを構成する太平洋の地殻物質の島弧マグマヘの化学的寄与は、深発地震面の深さが200ないし300km程度を境として、それより深部では弱まると解釈することが可能である。
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