Research Abstract |
多糖の一種であるアミロースと, メトキシ, メチル, エチル, クロロ, ブロモ, ニトロなどの置換基を有する10種類のモノあるいはジ置換フェニルイソシアナートとを反応させ, アミローストリスフェニルカルバメート誘導体を合成した. これらのカルバメート誘導体をシリカゲルに吸着させて高速液体クロマトグラフィー用充填剤とし, トランスースチルベンオキシド, トレガー塩基, ベンゾイン, 2ーフェニルシクロヘキサノン, フラバノンなどに対する光学分割能を評価した. その結果, 充填剤の光学分割能は置換基の影響を強く受け, 置換基としては電子供与性のアルキルあるいは電子吸引性のハロゲンが好ましく, 特に, 3,5ージ置換体が良好な分割結果を与えた. 中でも, 3,5ージメチル誘導体は, 分割可能なラセミ体の範囲が広く, 上述のラセミ体の多くを完全分割することができた. この充填剤は, 先に見出した実用性の高い充填剤であるセルローストリスー3,5ージメチルフェニルカルバメートに匹敵する有用な充填剤と思われる. また, アミロース誘導体の光学分割能は, セルロース誘導体の分割能とは異なり, これまでセルロース誘導体で光学分割できなかったラセミ体のいくつかを完全分割することができた. アミローストリスー3,5ージクロロフェニルカルバメートはプロメタジン, ジクロロイソプレテノールなどの医薬品に対して, 特異的に優れた分割能を示した. キトサン, キシランについても3,5ードメチルフェニルカルバメート誘導体を合成し, その光学分割能を評価した. キトサン誘導体については特によく分割される化合物は見当らなかった. キシラン誘導体は, 特徴のある光学分割能を示し, トレガー基やコバルトのトリスアセチルアセトナート錯体をセルロースやアミロースのカルバメート誘導体よりかなりよく分割することができた.
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