1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61470109
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
国武 豊喜 九大, 工学部, 教授 (40037734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 雄一 九州大学, 工学部, 助手 (30184500)
東 信行 九州大学, 工学部, 助教授 (10156557)
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Keywords | 二分子膜金属錯体 / ESRスペクトル / スピン間相互作用 / 磁性薄膜 / 合成二分子膜 / 分子配向 |
Research Abstract |
新規有機磁性薄膜開発の基礎として、初年度は、二分子膜金属錯体の合成およびその水分散系における集合特性の決定,集合特性と金属間相互作用との関係を明らかにし、さらに固定薄膜化の手法を開発した。 まず、親水部にサイクラム,β-ジケトン基,疎水部にアゾベンゼン基を含む一本鎖型両親媒性化合物を合成した。これらはいずれも水中で安定な二分子膜を形成することを電子顕微鏡観察,熱分析,電子スペクトルから確認した。アゾベンゼン基の電子スペクトルから二分子膜表面における銅(【II】)イオンとの錯化に伴う分子配向の変化を追跡した。サイクラム型二分子膜配位子の分子配向に対する錯化の効果はテール,スペーサー鎖長に強く依存している。β-ジケトン型二分子膜配位子は混合膜中錯化により相分離が誘起される。またゲル-液晶相転移現象,会合形態も錯化の効果を強く受け使用する金属塩と膜配位子の分子構造に依存することがわかった。 以上の二分子膜金属錯体の水中での集合特性を基礎として、金属間相互作用をESR測定により検討した。今回合成した銅錯体のESRスペクトルは、すべての系において、スピン間双極子相互作用に基づく超微細構造が明確に認められないブロードなシグナルを与えた。一方、大過剰の反磁性マトリックスで希釈すると単核銅(【II】)錯体に特徴的な超微細構造が出現した。このことから、二分子膜銅(【II】)錯体において銅スピン間相互作用が存在することがわかった。今後、ESRの温度変化測定により金属間相互作用の種類と大きさとを解明する方針である。また、金属間相互作用の大きさは分子配向に強く依存していることも判明した。Fe(【III】)等他金属は、二分子膜配位子との会合定数が小さく定量的な錯体は得られなかった。数種の二分子膜金属錯体はさらに固定薄膜化可能であったので、分子構造と薄膜磁性の関連について検討を行う。
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[Publications] T.Kunitake: J.Am.Chem.Soc.108. 327-328 (1986)
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[Publications] Y.Ishikawa: Chem.Lett.1181-1184 (1986)
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[Publications] Y.Ishikawa: J.Am.Chem.Soc.108. 8300-8302 (1986)