1988 Fiscal Year Annual Research Report
食肉の軟化に関与するパラトロポミオシンに関する研究
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61470140
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 興威 北海道大学, 農学部, 助教授 (40001432)
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Keywords | 食肉の軟化 / 食肉の熟成 / パラトロポミオシン / パラトロポミオシンの精製 / 硬直結合の脆弱化 / サルコメアの伸長 |
Research Abstract |
パラトロポミオシンは、死後硬直時にアクチン・ミオシン間に形成された硬直結合を脆弱にする作用を有する筋原線維性蛋白質であるが、本年度はパラトロポミオシンの精製および作用機構の解明を目的として、科学研究費補助金の補助條件に従って消耗品を購入し、以下に述べる成果を得ることができた。従来、パラトロポミオシンの精製には2週間を要し、かつ低収量であったので、精製法に改良を加えた。筋原線維から0.1mMCa^<2+>を含む溶液で抽出する方法に代えて、Hasselbach-Schneiderの溶液で抽出を短時間に行ない、抽出液について硫安分画を行なった後、FPLCによって精製標品を得た。この改良法によると、精製に要する日数を5日間に短縮でき、しかも収量を従来法の約4倍に増加させることが可能になった。このようにして得られたパラトロポミオシンを用いて、昨年度に続いて、グリセリン筋の硬直張力に及ぼすパラトロポミオシンの影響を精査した。グリセリン筋を弛緩溶液から硬直溶液に移すことによって発生する硬直張力は、対照区において少なくとも3時間は維持されたが、他方、硬直を起こしたグリセリン筋にパラトロポミオシンを添加すると、添加後2-3分間でパラトロポミオシンの効果が現われ、10分後には張力が当初の値の65%に低下した。このことはパラトロポミオシンが硬直結合を脆弱にすることを明示している。また、グリセリン筋の発生する硬直張力が小さい程、パラトロポミオシンの効果は顕著に現われた。熟成中の食肉におけると同一條件下でパラトロポミオシンの効果は最大に発現され、硬直張力が低下するばかりでなく、筋の一端に荷重を加えるとサルコメア長が2.4μmから3.6μmへと容易に伸長した。これらの結果から、食肉の熟成中にははらが硬直結合を脆弱にし、サルコメアの伸長を誘起することが明らかになり、パラトロポミオシンは熟成に伴う食肉の軟化に大きく寄与していると結論された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] A.Hattori: J.Biochem.103. 809-814 (1988)
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[Publications] M.Yamanoue: J.Biochem. 103. 843-847 (1988)
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[Publications] 高橋興威: 生物科学. 40. 140-147 (1988)
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[Publications] M.Takahashi: J.Biochem. 105. 149-151 (1988)
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[Publications] K.Takahashi: J.Biochem.