1986 Fiscal Year Annual Research Report
成熟分裂誘起時に特異的に出現するプロテインキナーゼの精製とMPFとの関係の解明
Project/Area Number |
61480024
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐野 清 北海道大学, 理学部, 助教授 (10146516)
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Keywords | 卵成熟 / 卵成熟促進因子 / 卵母細胞 / タンパク質リン酸化反応 / プロテインキナーゼ / 細胞周期 / ヒトデ / Caによる不活性化 |
Research Abstract |
ヒトデの成熟開始卵に特異的に出現する、Ca,cAMP非依存の"卵成熟特異的プロテインキナーゼ(M-spPK)"の精製に先立ち、精製に必要な指標としてM-spPKの特性についてさらに以下の点を明らかにした。 1.M-spPKはcGMPによる活性化を受けたものではないことが判明した。2.成熟開始卵上清と未成熟卵上清に共通して存在する高いプロタミンリン酸化活性は、双方に一貫して存在するプロテインキナーゼ(PK)によることが判明した。3.M-spPKの活性維持と不活性化要因:還元剤ジチオスレイトール(DTT)の添加がM-spPKの活性維持に顕著な効果を示した。また、DTT存在下でも、【Ca^(++)】の添加によりM-spPK活性は急速に低下した。これらの事実から、M-spPKの活性を低下させる要因として、(1)SH基の酸化、(2)【Ca^(++)】に依存した不活性化因子の存在、の少なくとも2つがあることが判明した。4.活性低下したM-spPKおよび未成熟卵上清中のPK性に対するDTT添加の影響:0℃放置により活性低下をきたした成熟開始卵上清希釈液にDTTを添加したところ、低下した基低活性レベルの約2倍近い活性回復がみられた。DTTがM-spPKの活性維持に寄与することをあわせ考えると、M-spPKの活性型の形成と維持にSH基が重要な役割を果たしている可能性が考えられた。実際、未成熟卵上清希釈液にDTTを添加したところ、無添加の場合の少なくとも約3倍の活性化がみられた。これらの結果から、卵の成熟分裂誘起の過程で、未成熟卵中に存在すると考えられるM-spPKの不活性型が活性型に変換される一つの可能な機構として、そのPK自体またはそれの活性調節因子の-S-S-→-SHの変換が働いている可能性が示された。また、M-spPKの【Ca^(++)】依存の不活化は、抽出液中のMPFが【Ca^(++)】により容易に失活するという報告と【Ca^(++)】感受性という点で一致し、M-spPKとMPFの類似性が示唆された。
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