1988 Fiscal Year Annual Research Report
平滑筋細胞膜における単一イオンチャネル機構の電気生理学的研究
Project/Area Number |
61480097
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
富田 忠雄 名古屋大学, 医学部, 教授 (50078763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 晋介 名古屋大学, 医学部, 助手 (30192230)
徳納 博幸 名古屋大学, 医学部, 助手 (60155520)
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Keywords | 平滑筋 / イオンチャネル / パッチクランプ / Kチャネル / Caチャネル / pH / カテコルアミン |
Research Abstract |
Ca依存性のKチャネルは0.1ー1μMの低濃度のCaイオンでその開閉が制御されているので、Caに対し収縮蛋白と同程度の感受性をもっているといえる。収縮蛋白のCaによる制御にはカルモジュリンが関与することが知られていて、他の組織におけるCa依存性Kチャネルでも同様のことが推定されている。しかし、家兎の気管平滑筋のものではカルモジュリン拮抗剤であるWー7やトリフルオペラジンを与えると、0.1μM付近のCaの濃度ではチャネルの開確率がむしろ上昇することが認められるので、少なくともこの細胞のチャネルではカルモジュリンの関与はないものと考えられる。昨年度にはCa依存性のKチャネルは細胞内pHをアルカリにするとCaに対する感受性が増しチャネルの開確率が増加することを明らかにしたが、家兎門脈の平滑筋細胞のCaチャネルでも同様にアルカリにするとチャネル電流が著明に増加することが明らかとなった。細胞内がアルカリに傾いたとき収縮の増強が起こることが知られているが、これにはこの実験で確かめられたように、Ca電流の増強が一因であると考えられる。この場合、同時に起こるCa依存性K電流の増加が過度の収縮を抑える負のフィードバック機構として働いているものと推測される。カテコルアミンは心筋ではCa電流を増して興奮性に働き、血管平滑筋に対してはα受容体を介して収縮、β受容体を介して弛緩を起こす。ブタの冠動脈の平滑筋の単離細胞ではα作用は不明確であるが、β作用はCaチャネル電流を増加させるという結果が得られた。アデニレートシクラーゼを直接活性化するフォルスコリンでも同様の結果が得られたので、これらのCa電流増強作用は心筋におけるように細胞内のサイクリックAMPを介しているものと考えられる。平滑筋では細胞内におけるCa処理機構の活性化の方がCa流入の増加の効果よりも優勢になるために弛緩が起こるとして説明可能であるが、α作用について今後さらに検討が必要である。
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[Publications] Tomita,T.: Japanese Journal of Physiology.38. 1-18 (1988)
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[Publications] Gonda,H.;Baba,K.;Satake,T.;Takagi,K.;Tomita,T.: Pulmonary Pharmacology.1. 7-13 (1988)
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[Publications] Kume,H.;Tokuno,H.;Tomita,T.: Journal of Physiological Society Japan.50. 519 (1988)
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[Publications] Tokuno,H.;Kume,H.;Tomita,T.: Journal of Physiological Society Japan.50. 519 (1988)
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[Publications] Tomita,T.: Japanese Journal of Pharmacology.46. 24 (1988)
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[Publications] 富田忠雄: 臨床薬理. 19. 375-378 (1988)