1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61480107
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久野 宗 京大, 医学部, 教授 (50142295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 嘉夫 京都大学, 医学部, 助手 (30181027)
高橋 智幸 京都大学, 医学部, 講師 (40092415)
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Keywords | 脊髄 / 運動ニューロン / シナプス / 河塑性 / ラット / 筋紡錘 / テトロドトキシン / EPSP |
Research Abstract |
本研究はラットの末梢神経の興奮伝導を数日間にわたって阻止して、末梢の筋紡錘から由来するIa感覚神経によって形成されている脊髄運動ニューロンへの単シナプス性反射弓の不使用状態を実験的に誘起し、この条件下で見られる中枢シナプスの可塑的変化を解析することを目的とする。この目的のために、ラットの坐骨神経をテトロドトキシンによって局所的に長期間ブロックすることを試みた。外径1mmのガラス管の一端を内径約2μmに加熱漸縮し、テトロドトキシン溶液を充たし、他端を封じてその溶液が緩徐に拡散するように作製した。このガラス管をラットの坐骨神経の神経鞘膜下に挿入すると、坐骨神経は30分以内にブロックし、この伝導ブロックは1週間にわたって維持することができた。筋紡錘由来の感覚神経は脊髄運動ニューロンに直接興奮性入力を形成しているので、このシナプス伝達に対する不使用効果を検討することを企画した。シナプス伝達の効率を測定するために、脊髄運動ニューロンから細胞内電位を記録し、下肢の内側あるいは外側腓腹筋神経刺激によって発生する単シナプス性の興奮性シナプス電位(EPSP)を観察し、そのEPSPの平均振巾をシナプス効率の指標とした。約1週間のテトロドトキシによる末梢神経の伝導のブロック後、テトロドトキシンガラス管を除去すると12時間以内に伝導は回復した。その時に記録した運動ニューロンの単シナプス性EPSPの振巾は正常の値より有意に増大していた。このEPSPの変化には運動ニューロンの静止膜電位,活動電位,及び入力膜抵抗の変化は伴わなかった。したがって、長期間シナプス入力を使用しなければ、そのシナプスの効率は有意に上昇すると結論される。この効果は、神経筋接合部において報告されている長期不使用効果とよく一致する。このシナプス効率の上昇が、中枢シナプスの発芽形成によるか否かを現在検討中である。
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