1986 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の分化と癌化におけるポリ(ADP-リボース)の役割に関する研究
Project/Area Number |
61480122
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 国寛 京大, 医学部, 助教授 (00027070)
|
Keywords | 細胞分化 / ポリ(ADP-リボース) / テラトカルシノーマ / ポリ(ADP-リボース)シンテターゼ阻害剤 / 分化誘導 / マイクロインジェクション / フレンド赤白血病細胞 / 抗ポリ(ADP-リボース)抗体 |
Research Abstract |
概ね当初の計画に従って研究を進め、以下の成果を得た。 1.細胞分化におけるポリ(ADP-リボース)代謝の変動と役割の解析ー先年見出したマウスのテラトカルシノーマ細胞のポリ(ADP-リボース)シンテターゼ阻害剤,3-アミノベンズアミドによる分化誘導を、他の誘導剤,レチノイドによる誘導と比較した。その結果、一見よく似た類上皮細胞への分化であっても、両者は"Commitment"(分化への運命決定)に要する時間、完全に形態学的変化を遂げるまでの時間と途中経過,最終的な分化形態などの点で、可成違うことを見出した。 2.マイクロインジェクションによる分化誘導の試みーフラスコ底定着型のフレンド赤白血病細胞に抗ポリ(ADP-リボース)抗体をマイクロインジェクトしたが、赤血球系への分化を誘導するに到らなかった。この結果、他の分化可能な癌細胞に当るとともに、(抗ポリマー抗体でなく)抗シンテターゼ抗体の使用,および(細胞質でなく)細胞核内へのインジェクションを試みるべきことが示唆された。 3.新しいポリ(ADP-リボース)シンテターゼ阻害剤の検索と応用ー既知の阻害剤のほとんどが、阻害の強さ,細胞膜透過性,副次効果,あるいは特異性の点で、in vivoへの適用に制限を有する点に鑑み、新しい阻害剤を求むべく、広く種々の化合物について、シンテターゼ阻害作用の有無を調査した。その結果、既知の阻害剤の構造類縁体のみでなく、全く構造を異にする多数の化合物,例えばフタルヒドラジドやキサンツレン酸,が強力な阻害作用をもつことを見出した。今後、これら新しい阻害剤の中から、細胞毒性,代謝安定性,作用特異性などの点で優れたものを選別し、テラトカルシノーマやフレンド細胞に適用してみる計画である。
|
-
[Publications] Kazuyuki Hatakeyama: Journal of Biological Chemistry. 261. 14902-14911 (1986)
-
[Publications] 上田国寛: 日本臨床代謝学会記録. 23. 268-269 (1986)
-
[Publications] Kunihiro Ueda: "Pyridine Nucleotides" John Wiley&Sons, (1987)