1987 Fiscal Year Annual Research Report
生活環境の差異による微量元素の毒性及び必須性の変動に関する実験的研究
Project/Area Number |
61480162
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 継美 東京大学, 医学部, 教授 (80009894)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 哲郎 東京大学, 医学部, 助手 (90199563)
柏崎 浩 東京大学, 医学部, 講師 (60004735)
|
Keywords | 微量元素の毒性 / 微量元素の必須性 / 環境温度 / 生体影響の指標 |
Research Abstract |
これまでに, セレン(Na_2SeO_3)をマウスに一回投与した場合に投与量に依存しておこる一過性の体温低下が環境温の高い場合にはみられないこと, 更に高温下で飼育したマウスではセレンの致死毒性が高いことを明らかにし, セレン毒性と体温低下の関連についての研究を進めてきた. 今年度得られた新しい知見は以下のとおりである. 1.水銀(HgCl_2)の一回投与により, 投与量に依存して一過性の体温低下がおこる. また, セレンと水銀を同時投与した場合にも体温低下がみられ, その低下の程度はそれぞれを単独投与した場合の低下を加算したものではなく, セレン単独投与の場合と同程度であった. 2.水銀あるいはセレン単独投与による体温低下の程度は投与経路(静脈内, 腹腔内,皮下)により差のあることが明らかとなった. 水銀投与の場合, 静脈内投与ではその投与量にかかわらず体温低下が認められなかった. 3.水銀・静脈内投与の場合を除き, 水銀またはセレン投与によって誘導された体温低下の程度と, 投与5分後の血中水銀またはセレン濃度との間には高い関連性がみられた. このことより, 投与直後に血中に存在する水銀またはセレンが体温低下の引金となり, 更に体温低下の程度を決定することが示唆された. 4.セレン単独投与によっておこる一過性の摂食昴進は, 水銀単独投与あるいは水銀・セレン同時投与ではみられず, 摂食昴進が体温低下により生じる二次的な反応ではないことが示唆された. 5.還元型グルタチオン(GSH)を投与した場合, 血漿中GSH濃度は20分後にピークを示し2時間後には元のレベルにもどった. セレンの投与が血漿中GSH濃度の上昇中になされた場合その致死毒性が高まった. なお, 体温低下もGSH投与によって強まった. 6.セレン単独投与により, 肝臓において量依存的にメタロチオネインの誘導が認められた. 一方, 環境温は肝臓のメタロチオネイン誘導に有意な影響を示さなかった.
|
Research Products
(2 results)