1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61480170
|
Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
栗原 登 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (40093752)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 正明 大広大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (40173794)
早川 式彦 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助教授 (40022834)
|
Keywords | 症例ー対照研究 / 原子爆弾被爆者 / 循環器疾患死亡 / ロジスティック回帰分析 |
Research Abstract |
被爆者には昭和32年から「原爆医療法」により健康診断が行われているが、その系統的な評価がなされていない、昭和43ー52年に広島県在住の被爆者の死亡解析により、循環器疾患において、被爆者の方が死亡率が著しく低いことが判明しており、健康診断の成果の一端と考えられる。そこで50ー69歳の被爆者において死亡ー対照研究により検討した。(対象と方法)当研究所の被爆者人口より死亡場所が広島市で年齢50ー69歳の循環器疾患(第8回ICDコード393〜438)死亡者のうち被爆者健康診断記録のある1,311例を症例とし、対照は昭和53年以降広島市に在住していた被爆者で検診記録のある者のうち症例と性・生年月を対応させた1,311例とした。(結果)1.男665例、女646例2.脳血管疾患死亡56%虚血性心疾患死亡20%3.症例と対照の健康診断平均受診回数11.9回、12.0回で両者に差なし。4.検査項目別の受診状況は一般検査項目では対照に多く、精密検査項目では症例に多かった。5.各種検査別における正常者に対する異常者の循環器疾患で死亡する相対危険度(RR)の高い検査項目は血圧(RR=3.3)、尿蛋(RR=3.1)、心電図(RR=2.6)、心胸比(RR=1.9)、血清總コレステーロ(RR=1.7)などであった。6.異常所見を有した者のその後の治療状況別にみた正常者に対する相対危険度は、なんらかの治療を受けていた者では未治療者より低かった。特に尿蛋白陽性者、拡張期高血圧者、心胸比の異常者において著しかった。ロジスティック回帰分析によると、1.高血圧は長期に亘る者ほど正常者に比して危険が高い。2.高血圧の治療者は未治療者より危険が低い、3.死亡の2年以上前より血清コレステロール値が高い者は危険が高い。4.心電図の異常所見、自覚症状も長期に亘る者ほど危険が高い。以上、被爆者健康診断において、循環器系の特別の検診は行われていないがかなりの効果が上がっていることが明らかになった。
|