Research Abstract |
本年度は,内視鏡的に純膵液を採取する症例を増やし,昨年度からの重炭酸,anylase,蛋白,lactoferrin(LF),CA19ー9,STー439などに加えて,SLX,CAー50をも新たに測定し,plugの有無との関連などについても分析した. さらに,膵疾患を中心に上述の各種糖鎖抗原の免疫組織化学的検討を行い,膵液中糖鎖抗原の変動の意義を明らかにしようとした. 得られた成績は以下のように要約される. 1.膵液中LF濃度は慢性膵炎(CP)I群で46%,CPII群で20%の異常上昇がみられた, 石灰化の有無で検討すると,非石灰化で37%に対し,石灰化群で91%と明らかにLFの陽性率は高かった. また, 膵管線の異常度との関連では,高度膵炎で65%に,中等度膵炎で32%にLFの異常上昇がみられ,高度なCPでよりLFの上昇する頻度が高かった. 2.膵液中LF濃度とplugとの関係をみると,plug(+)群で52%,(-)群で40%にLFの上昇がみられ,plug(+)群でLFの上昇する頻度の高い傾向がみられた.3.plugの有無と膵管像の異常度との関連についてみると,高度膵炎で60%,中等度膵炎で26%にplugがみられ,高度な膵炎でより頻繁にplugが認められた. 4.各疾患群の膵液中CA50値は対照群と有意な差異はみられず,その測定の意義は認められなかった. 5.膵液中SLXは分泌相で判定すると膵癌のみで38%の異常上昇がみられたが,排出相では疾患特異性はみられず,その測定の有用性は乏しい. 5.各種糖鎖抗源の膵組織における免疫組織化学的検索では,I型糖鎖抗原のCA19ー9やCAー50は非癌膵組織でも高率に染色され,癌特異性は低い. しかし,慢性膵炎では小膵管の増生部を中心にCA19ー9の染色性が高度となり,膵液中CA19ー9の上昇として反映され,その病理学的背景になると考えられた,6.SLXとSTー439は非癌膵組織ではほとんど発現せず,癌特異性は非常に高いが,膵癌における陽性率はI型糖鎖群よりも一般に低い.
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