1987 Fiscal Year Annual Research Report
慢性骨髄性白血病および芽球性急性転化に伴う発癌遺伝子活性化機構に関する研究
Project/Area Number |
61480259
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
今村 孝 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (00037368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 衡 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 助手 (70188960)
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Keywords | 慢性骨髄性白血病 / 急性リンパ性白血病 / フィラデルフィア染色体 / がん遺伝子 / 遺伝子組換え |
Research Abstract |
我々は,7例の慢性骨髄性白血病(CML)および芽球性急性転化,1例の急性リンパ性白血病(ALL)患者について,Ph(フィラデルフィア)染色体における遺伝子転座・組換え変異によるがん遺伝子活性化機構を解析した. Ph染色体転座に伴い,9番染色体上のがん(abl)遺伝子は22番染色体上のbcr遺伝子と交叉し,bcr/abl融合がん遺伝子が形成される. そこでabl遺伝子の活性化が起こり,白血病が発症すると考えられる. 詳細な遺伝子地図の解析から,bcr遺伝子の切断点は70kb(×1000塩基対)の塩基配列の中ほど,およそ5kbの領域にあり,一方,abl遺伝子のそれは5′端のおよそ14ー1000kbの領域にあることを明らかにした. この交叉(転座)によってabl遺伝子は第1エクソンを含け5′端が欠失し,bcr遺伝子の調節域に入る. したがって,abl遺伝子の活性化(調節異常)が起こり,がん化機構が形成される. ALLではこのbcr/abl遺伝子交叉がCMLで見られるよりさらにbcr遺伝子の5′側で起こり,この結果生じた融合遺伝子からbcr遺伝子由末の塩基配列が欠失する. このため,abl遺伝子の転写効率が一層高まると考えられる. 以上の結果から,CMLの急性転化の仕組について,bcr/abl融合遺伝子の5′端における塩基配列の再組換え(次失)を考えた. 急性骨髄性白血病で高率に証明されるがん遺伝子(ras)の変異を,NIH3T3形質転換細胞のヌードマウスにおける腫瘤形成試験および遺伝子増幅法によって解析した. CMLの急性転化およびALL患者細胞のいずれにもras遺伝子の活性化をもたらす変異は証明されなかった. 今後,活性化がん(bcr/abl)遺伝子の血液細胞増殖・分化に及ぼす生理機能を明らかにしたい.
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Research Products
(2 results)