Research Abstract |
造血器腫瘍全般に互って. リンパ球の抗原受容体, すなわちB細胞における免疫ブロブリン, T細胞におけるT細胞受容体(TCR)β, γ鎖の遺伝子再構成の有無を引き続き解析した. その結果, 新たに悪性リンパ腫においてTγ鎖のみ再構成し, Tβは再構成していない2症例を見い出した. 1例はT細胞表面形質を有し, 1例は有意な表面形質を持たなかった. TCRαーβ鎖は使用せず, 新たに単離されたδ鎖とダイマーを形成あるTγ鎖のみを使用するサブラット由来と考えられた. TCRγ, δ鎖のみ発現するT細胞は極く少数であり, その機能や分化の解析に貴重な症例と思われる. 造血器腫瘍発症機構へのアプローチとして, まず種々の細胞分化増殖因子(ILー1, 2, 3, GMーCSFなど)に対する腫瘍細胞の反応をみた. 巨核芽球性白血病の1症例において, ILー1添加により増殖促進し, 抗ILー1β抗体によりその作用を阻止し得ることを見い出した. さらに, ILー1βのmRNA発現と培養上清にILー1活性を認めた. すなわち, 目ずから産生したILー1βに反応し増殖する(自己増殖)白血病細胞と孝えられた. 現在, 他の分化増殖因子を含め, その反応性とmRNA発現を解析中である. ATLにおける細胞表面のTCR/T3発現の低下はすでに報告したが, TERβ, γ鎖の遺伝子再構成には共通のパターンはなく, TCRα, β, γ鎖とT3のmRNA発現は逆に増強していることを明かにした. ATLは細胞表面において何らかの抗原を認識していると考えられ, ATLに特異的なことから, 発症との関係をさらに解析中である. また正常T細胞では産生しないILー1活性がATL細胞培養上清に存在し, ほとんどのATL細胞においてILー1mRNA発現をみることから, 病態, 発症との関係が示唆された. 現在, さらに既知および未知の癌遺伝子と病態, 発症の関係を染色体異常を呈する造血器腫瘍細胞を中心に解析中である.
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