1986 Fiscal Year Annual Research Report
脳死患者の循環動態,諸臓器機能および内分泌機能に関する研究
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61480267
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 侃 阪大, 医学部, 教授 (10028342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 正徳 大阪大学, 医学部, 助手 (90187419)
上西 正明 大阪大学, 医学部, 助手 (90176610)
阪本 敏久 大阪大学, 医学部, 助手 (50178571)
横田 順一朗 大阪大学, 医学部, 助手 (10166879)
吉岡 敏治 大阪大学, 医学部, 助教授 (60127313)
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Keywords | 脳死 / 抗利尿ホルモン(ADH) / 循環動態 / 脳下垂体 / 心機能 / 腎機能 / 肝機能 |
Research Abstract |
脳死患者の循環動態を極めて不安定で、通常のカテコールアミン投与では大多数が48時間以内に心停止に至る。これに対し抗利尿ホルモン(ADH)とエピネフリンを同時に脳死患者に投与することにより、循環動態を安定に維持することに成功した。ADHの必要量は、1単位/hr程度が適当で、尿崩症治療に必要な0.1〜0.2単位/hrでは不十分であり、ADHを1単位/hrで持続投与した場合、血圧を安定化するに必要なエピネフリンの投与量は0.1〜0.5mg/hrであった。このことは脳死患者の循環動態に対し、エプネフリンとADHが特殊な協調作用を持つことを意味している。この様な方法で循環動態安定化に成功し、長期脳死状態における心,肝,腎の臓器機能を検討した結果、心機能は心電図、心筋逸脱酵素よりみて、腎機能はBUN、クレアチニンクリアランス等の諸検査よりみて、ほぼ正常に保たれるのに対し、肝機能は、特にビリルビンの上昇を中心とする胆汁うっ滞型の肝障害を認めることが特徴的であった。臨床的,組織学的検索によってもこの様な肝機能障害の原因は明確に説明できず、次年度以降の検討課題となっている。脳死後の脳下垂体機能は常に完全に廃絶するわけではなく、前葉ホルモンの分泌が確認できた例がみられ、大脳及び脳幹の機能廃絶と脳下垂体機能の廃絶とは、独立した現象であることが証明できた。しかし、脳下垂体後葉ホルモンであるADHは、視床下部で合成された後、脳下垂体に貯蔵される事実より、脳死後早期に血中より消失した。これは、脳死患者においてADHの持続的な補給が常に必要であることともよく一致している。レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の水電解質調節機能に関しては、未だ一定の結果が得られておらず、今後の検討課題である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Toshiharu Yoshioka: Neurosurgory. 18. 565-567 (1986)
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[Publications] 坂野勉: 外科治療. 55. 907-908 (1986)
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[Publications] 坂野勉: 病態生理. 4. 787-791 (1985)
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[Publications] 杉本侃: 医学のあゆみ. 134. 471-472 (1985)
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[Publications] 杉本侃: 医学のあゆみ. 134. 867-868 (1985)
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[Publications] 杉本侃: 外科治療. 52. 468-469 (1985)