1988 Fiscal Year Annual Research Report
中枢性肺水腫の発生メカニズムと麻酔薬、麻酔深度の効果
Project/Area Number |
61480332
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Research Institution | Nagoya University School of Medicine |
Principal Investigator |
島田 康弘 名古屋大学, 医学部, 教授 (50028669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 直久 名古屋大学, 医学部, 助教授 (80109321)
貝沼 関志 名古屋大学, 医学部, 講師 (90135335)
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Keywords | 肺水腫 / 中枢性肺水腫 / 麻酔深度 / 迷走神経 / 二酸化炭素濃度 |
Research Abstract |
中枢性肺水腫の発生原因としては、頭蓋内圧亢進、脳虚血、脳低酸素症に起因する遠心性刺激が迷走神経等を介して肺毛細管や肺胞に影響を及ぼすことが考えられている。著者らの施設では肺循環系と体循環系および気管支循環系を別個に操作できるモデルを作成し、気管支循環系が中枢性肺水腫の発生に大きく関与しているのではないかとの印象をもってきた。しかし、いまだに中枢性肺水腫の詳細な標的器官やメディエータについては不明な点が多い。本年度の研究成果として、著者らは中枢性肺水腫モデルとしてフィブリン肺水腫をラットで作成することにより、麻酔深度、迷走神経系の影響を観察しえた。すなわち、72匹のラットに麻酔をかけ、気管切開を行った。これらを、麻酔薬投与量の多少、迷走神経遮断処置(無処置、アトロピン投与、迷走神経切断)により群分けし、フィブリンを大槽内へ注入することにより出現する肺水分量(肺乾湿重量比)の変化を観察した。その結果、深麻酔では浅麻酔に比べて肺水分量の軽減がみられた。迷走神経遮断による肺水分量増加効果は深麻酔では観察されず、浅麻酔時には有意であった。この実験から、麻酔深度が中枢性肺水腫の発生に及ぼす効果が示唆された。次に、体外循環モデルを用いて肺水腫発生機序を研究するに際して、灌流液の二酸化炭素(CO_2)濃度が肺水分量に影響を与えることが知られている。この原因の一つに、血小板からのトロンボキサンA_2(TXA_2)産生がCO_2により増強されること、およびその阻害薬としてisosorbide dinitrateが高濃度CO_2(8%CO_2)Fで有意に作用することを、健常人から採血した血液のCO_2暴露実験を行うことにより証明した。 本年度の研究の総括として、(1)体外循環を用いて行う灌流実験での基礎的実験条件を確定しえたこと、(2)麻酔深度により中枢性肺水腫の程度が変化しうること、をあげた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Nakamura,J.;Zhang S.;Ishikawa,N.: Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.14. 535-542 (1987)
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[Publications] Ishikawa,N.;Ichimura,I.;Kainuma,M.;Shigei,T.: Japan.J.Pharmacol.44. 159-167 (1987)
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[Publications] Kainuma,M.;Shimada,Y.: Anesthesiology. 66. 214-216 (1987)
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[Publications] Kainuma,M.;Nishiwaki,K.;Shimada,Y.: Anesthesiology. 69. 257-260 (1988)
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[Publications] Ishikawa,N.;Kainuma,M.;Furuta,T.;Sato,Y.: Japan.J.Pharmacol.46. 255-260 (1988)
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[Publications] Ishikawa,N.;Kainuma,M.;Taki,K.;Ichimura,I.: Arzneim.-Forsch./Drug Res.38. 1334-1335 (1988)