1986 Fiscal Year Annual Research Report
蝸牛内静止電位の維持機構の一因となり得るバナジウム化合物に関する研究
Project/Area Number |
61480360
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
森満 保 宮崎医大, 医学部, 教授 (40038675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 浩二 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (00145434)
井手 稔 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (00128365)
中野 隆之 鹿児島純心女子短期大学, 講師 (30155783)
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Keywords | バナジウム / Na,K-ATPase / 蝸牛内静止電位 / 発光法 |
Research Abstract |
内耳では様々な電気現象が観察されるが、このうちで蝸牛内静止電位はCM,APなどの諸誘発電位が発生する際のバッテリー源的電位として機能しており、その発生には蝸牛管側壁部に存在するelectrogenic pumpが役割を演じているとされる。このpumpの主要構成物質としてNa,K-ATPaseがあるが、前年度、報告した通り、生体内に存在する微量金属元素であるバナジウムは通常、約80mVあるEP電位を濃度依存的に低下させることが外リンパ灌流法により認められた。このことは蝸牛管側壁部(特に血管条部分)に存在するelegrrogenic pumpの本体であるNa,K-ATPase活性をバナジウムが阻害したためであろうと推論した。この電気生理学的実験結果より、本年度は、生化学的アプローチを行ない、同酵素とバナジウムの相互関係を明らかにすることを目的とした。 まず、モルモット内耳よりsurface preparationにより血管条を含む蝸牛管側壁部を摘出、homogenization,precipitationおよびcentrifugationを行ない、microzomal fractionを得た。さらに同fractionをHPLCにて精製を行ないNa,K-ATPase fractionを得た。このcrude Na,K-ATPase Soln.を用いて各種実験を行なうにあたり、同酵素の活性測定を試みた。本実験ではsampleが極微量であるため、通常の方法では検出が不可能であった。そこでLuciferin-Luciferaseを系とする発光法を用い、Lumiphotometerにて測定することとした。その結果、同測定法にて蝸牛管側壁部Na,K-ATPaseの極微少酵素活性を測定することができた。酵素活性は各回転側壁部に認められ、さらに基底回転,第2回転,第3回転〜Apexの相対活性が100:120:127であることがわかった。また、Na,K-ATPase:Other ATPaseの活性割合は蝸牛全体で64.8:35.2であり、基定回転,第2回転,第3回転〜ApexではTotal ATPaseに対するNa,K-ATPase活性の占める割合はそれぞれ、76.0,60.3,56.8%で、各回転とも5割以上の活性を有し、EP発生に大きく寄与していることが示唆された。
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