Research Abstract |
通常動物と無菌動物の特性を比較した研究により,腸内常在フローラが宿主の栄養をはじめとする種々の生理機能から,感染・発癌などの病態までの生体における多岐にわたる現象に関与していることが明らかにされている. したがって無菌動物に既知の腸内菌を投与して腸内に定着させたノトバイオート,とくに,ヒトの腸内菌によって作出したヒトクローラノトバイオート(HFGb)は,ヒトの栄養・内分泌・薬物代謝・免疫・感染・発癌・老化などにおける腸内フローラの役割を解明するためのきわめて有力な研究手段となる. 本研究では,まずヒトの腸内フローラ構成菌種によってバイオメディカルリサーチにスタンダードとして供しうるヒトフローラノトバイオートを作出し,その腸内酵素活性,生理機能並びに病理学的特性を明らかにし,さらにこれを用いて,腸内フローラの生態・栄養・薬物代謝・発癌などの研究における有用性をいくつかの実験モデルとして呈示する目的で研究を行った. 本年度は,61年度に作出した健康成人1例の糞便希釈液を無菌マウスに投与して作出したヒトフローラマウス(HFM)糞便より分離同定した90株より20菌株(Meganonas lypermegas,Eubactenim lentum,E.ventriosum,E.aerofaciens,Bifdobacterium adolescentis biovar c Rcid,B.langum,Ruminococcus obeum,Clostridium innocuum,Veillonella panula,Megashaera elsdenii,Lactobaci Uus acidophilus.L.reuteri,L.salivarius,Escherichia coli,Streptococcus spp.2株,Bacteroides vulgatus,B.ovatus,B.unifornis)を選択し,2回に分けた無菌マウスに径口投与したところ,Lactobacillusは全く消失し,E coli及びStreptococcusの菌数が原材料のヒト腸内フローラの構成よりかなり高い菌数を示した以外は,ほぼヒト腸内フローラの構成バランスに近似するノトバイオートマウスを作出することに成功した. 62年度はE coli,Streptococcusの菌数をさらに低下させる必要がある.
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