1986 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病チャイニーズハムスターにおける発症機構への副腎の関与
Project/Area Number |
61480450
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
米田 嘉重郎 東京医大, 医学部, 助教授 (90074533)
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Keywords | 自然発症糖尿病 / 発症率の雌雄差(性差) / グルココルチコイド / 副腎摘出 / チャイニーズハムスター |
Research Abstract |
当研究室で、雄では90%の高率で糖尿病を発症するが、雌ではほとんど発症しないチャイニーズハムスターの系統を新たに近交系として確立した。発症における雌雄差には性ホルモンが関与せず、副腎皮質ホルモンの関与が示唆され、今までに確立されている糖尿病モデル動物とは異なる特性を有する可能性が考えられた。本年度はこの糖尿病系統と対照系統を用いて、糖尿病の進展に伴う副腎皮質ホルモンの変化と、副腎摘出による糖尿病発症率ならびに病期の変化を明らかにした。 1.チャイニーズハムスターの血中グルココルチコイドレベルは、マウス・ラットと異なりコルチゾールが高くコルチコステロンが低い。発症前の雄での血中コルチゾールレベルは24.5±3.8ng/ml(n=7)で、同月令の対照系統雄と糖尿病系統雌がそれぞれ8.4±2.0(n=6)と4.2±0.7(n=5)であったのに比べ有意な高値を示した。さらに、雄では発症後も高値であった。一方、ほとんど発症が認められない雌では、雄が70%発症する8カ月令に達しても対照系統と差がなかった。2.発症雄を用いて副腎摘出を行い、3週間にわたって観察したところ、平均血糖値が300mg/dlの軽症群では全ての個体に血糖値の低下,尿糖陰性,耐糖能の正常化を認めた。しかし、平均血糖値が400mg/dl以上の重症群では副腎摘出による糖尿病症状の改善はみられなかった。 3.糖尿病系統の雄を用いて、発症前(3〜5カ月令)に副腎摘出を行い長期間,尿糖,血糖値,耐糖能を調べたところ、偽副腎摘出群と副腎摘出後にグルココルチコイドを投与した群に比べ、発症が有意に抑制された。 以上、新たに確立した糖尿病系統における発症率の雌雄差(性差)には、副腎皮質ホルモンの関与が強く示唆された。このことは今までの糖尿病モデル動物では明らかにされていない新知見である。
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[Publications] Komeda,K;Sato,T;Kanazawa,Y;Yokote,M: 1(Suppl.1). S314 (1985)
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[Publications] 米田嘉重郎,金澤康徳,横手元義: 糖尿病. 29(Suppl.2). 271 (1986)