1987 Fiscal Year Annual Research Report
野生集団からの染色体変異マウスの探索と実験系への導入
Project/Area Number |
61480451
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
今井 弘民 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助教授 (10000241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 和郎 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 教授 (50000229)
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Keywords | 自然染色体突然変異 / コンジェニックマウス / 染色体進化 / 染色体変異誘発機構 / 染色体変異マウスの探索 |
Research Abstract |
環境汚染の染色体に及ぼす影響評価並びに放射線による染色体突然変異の誘発機構を知る上での基礎資料を得るため,自然染色体突然変異の頻度とそのパターンを雄マウスの精巣を用いて調査している. 現在までに野生マウス672個体及び近交系マウス1328個体の合計2000匹について調査を終え,Yダイソミーニ例(No,148,441),第10染色体トリソミー(No,636),転座一例(No,834)および微小Y染色体とY染色体欠失モザイク個体1例(No,1238)の計五例の染色体異常個体が発見された. 各個体は妊性テストの結果不妊であることが確認された. 本研究の途上でオガサワラ産野生マウイに発見された動原体融合は妊性が確認されBALB/cとの戻し交雑が進められた結果N_5世代まで到達した. 今後さらに戻し交雑を進めN_<12>としコンジェニックマウスにする予定である. 同じく本研究の途上で,ウルムチ産野生マウスから第一染色体に異質染色質が挿入された突然変異個体が発見され現在妊性テストを行っている. これらの染色体調査と平行して,染色体突然変異の発生機構に関して,ランダム接触交換モデルを用いて転座・逆位・動原体融合の発生確率を計算し,放射線融発,癌細胞,ヒト新生児およびマウス野生集団に見られる各染色体突然変異の頻度を比較した. その結果,放射線と癌では理論計算によく一致する頻度(転座0.95,逆位0.05,融合0.0002)が得られ,これらはランダムな系であることが推定された. 一方,ヒトをマウス集団では動原体融合が理論値の500〜1000倍高いことがわかった. この現象は「融合爆発」と名ずけたが,最小作用仮説に基づく染色体進化の過途期現象として説明される可能性に加え,それと何らかの環境変異原の相乗作用による可能性が強まってきた. これらの理論解析を裏付ける資料を得るために,また,実験系マウスに染色体変異を導入するためにも,引き続きマウスにおける自然染色体突然変異の調査を行う予定である.
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[Publications] IMAI,H.T: In Modern Aspects of Species.Eds.by K.Iwatsuki,P.H.Raven,and W.J.Bock.University of Tokyo Press,Japan. 87-105 (1986)
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[Publications] IMAI,H.T: American Naturalist. 128. 900-920 (1986)
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[Publications] IMAI,H.T: Cytogenetics of Mammalian Autosomal Rearrangements,Ed.A.Daniel.Alan R.Liss,Inc.
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[Publications] 今井弘民: 放射線科学. 30. 307-311 (1987)
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[Publications] 今井弘民: Olympus Microscope Review. 13. 1-15 (1987)