1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61510073
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
靭負 正雄 神経科学総研, その他, 研究員 (20113491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 康隆 東京都神経科学総合研究所, 医学心理学研究室, 主事研究員 (40100135)
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Keywords | 視覚性記憶 / 同時的複式物体弁別学習 / 下部側頭回皮質 / TE野 / 扁桃核 / 海馬 / HRP標識法 / マカクザル |
Research Abstract |
1.本研究は、視覚性記憶機能に関係する下部側頭回皮質のTE野内の関与領域の精網な局在を行動学的および解剖学的実験により明らかにすることを目的としている。2.本年度は第一に、解剖学的手法のHRP標識法を用い記憶機能に密接に関与する扁桃核,海馬とTE野内の細分領域がどのような投射関係をもつかを検討した。被験体としてマカクザル6頭を用い、TE野を前後一背腹側の4つの領域に分けて、WGA-HRPを微量注入し、各々の領域と扁桃核,海馬(嗅内皮質を含む)との投射関係を分析した。その結果、(1),扁桃核との投射関係は、両方向性にTE野のどの領域とも存在したが、中でもTE野前半背側部が極めて強く、腹側部はかなり弱いことが示された。(2),海馬と嗅内皮質との投射関係は、TE野腹側部とCA1,嗅内皮質が直接の投射関係をもつこと、しかも後半部よりも前半部でこれらの投射関係が強いことが示された。(3),このように本知見は、TE野の前半部が、扁桃核,海馬とより密接な機能的関係をもつことを示唆した。3.本年度の第2の目的として、TE野の中に視覚性記憶に関与する領域を明らかに含むことを確認するために、TE野全体の摘除により視覚性記憶課題の一つである同時的複式物体弁別学習に障害を生ずるかどうかを7頭のサルを用い検討した。TE野摘除の前後および非摘除統制群との比較の結果、TE野摘除により、顕著な把持障害と再学習の障害が見られた。このようにして、TE野が、視覚性記憶に密接に関係するこのが示された。4.本年度の研究結果を合わせて考えると、もし記憶機能にとって扁桃核,海馬との関係が重要であるとするならば、TE野の中でも前半部が視覚性記憶により密接に関与する可能性を示唆する。次年度においては、この成果に基づき、TE野を前半部と後半部に分け、各々の摘除による視覚性記憶課題に対する効果を調べ、本年度の行動学的知見と比較検討する。
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Research Products
(2 results)