1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61510076
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
内藤 辰美 山形大, 教養部, 教授 (00064098)
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Keywords | 移民 / 明治国家 / 民族文化 / 家族国家観 / 社会過程 / 同化 / 適応と逸脱 / 臣民 |
Research Abstract |
近代日本の移民は明治国家によってその社会的性格の一部ー重要なる一部ーを規定されていた。移民が民族文化の運搬者であることは世界共通である。近代日本の移民も例外ではない。しかし近代日本の移民はそれ以上の存在であった。近代日本の移民は移民であると同時に臣民でもあり続けたのである。臣民は天皇国家独特の家族国家観にもとづいて創出された民衆である。当然のことながら近代日本の移民にかかわるこの性格は移住社会への適応にも大きな影響をあたえている。なぜならば近代日本の移民の場合、異文化社会への適性と同時に二つの国家の要求にも調和しなければならなかったからである。 移民の適応をめぐる社会学的研究は、当初、社会過程と同化をつなぐ理論(たとえばR.E.Park)を中心に展開されてきた。これらの研究に従えば適応の問題が同化を予想して扱われている。適応と同化を重ねて扱っている。たしかに適応と同化は深くかかわっている。しかし明らかに適応と同化は別の範畴に属している。Parkのモデルについても、「このモデルが最高の機能を発揮するのは均等な機会が存在するときであり、しかも二つの文化の双方に相手側と和解しようとする意思があるときだけである」(H・キタノ)という指摘は正しい。実際移民の移住社会への適応にはさまざまな様式が想定されるのであって先見的に同化を前提に論じられてはならない。現代社会学の成果が教えているように、適応や逸脱は社会構造の所産でもある。移民集団の移住社会への適応とその過程に関する研究はこの視点に立って正しく追求されるであろう。 本研究は現在こうした認識と視座にもとづいて進められている。次年度は適応過程のより具体的な分析と移民の日本回帰の問題に検討が加えられる予定である。
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