1986 Fiscal Year Annual Research Report
地域福祉におけるコミュニティワークの日本的展開に関する研究
Project/Area Number |
61510090
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
田端 光美 日女大, 文学部, 教授 (10060633)
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Keywords | コミュニティワーク / コミュニティワーカー / 地域福祉 |
Research Abstract |
欧米の地域福祉形成過程においては、コミュニティワークの理論、さらにコミュニティワーカーの実践が少なからぬ役割,位置を占めているといわれる。わが国でも地域福祉が政策課題として重視されるに従がって、コミュニティワークへの関心が芽生え、実践の局面ではコミュニティワーカーとしての活動もみられるが、地域福祉への関心の深さに比べると、そこには著るしいギャップの存在するのが現状である。わが国では、なぜ地域福祉の展開にコミュニティワークが必然化されないのか、その形成過程の特質と影響を、日英比較から明かにすることを目的に、文献研究と事例調査を行なった結果、次の点が明かになった。 (1)英国では歴史的,社会的に家族=住民の生活を侵すものに対して、コミュニティが協力,援助するという関係が極めて大きく、換言すれば家族と国家との間に所在するコミュニティ=地域の意味は伝統的に許容されてきている。しかも、コミュニティの援助が行政=国家に影響を及ぼし、社会福祉制度の形成を促進してきた歴史は、地域福祉においてコミュニティを容認することに何の抵抗もないといえる。 (2)これに対し、わが国では戦前の天皇制のもとで国家による地域支配がきわめて濃厚であり、コミュニティ=地域は個人の生活の中では不在といってもよい状態で、この点が英国ときわめて対照的である。 (3)このような歴史的背景は、今日の地域福祉推進にも少なからぬ影響を及ぼしているが、大都市では理念的コミュニティが存在しても、実体としては排除し、行政依存の強い地域福祉志向となり、地方都市では家族の中にかつての家父長制家族制度の残存さえみられ、阻害的要因となっている例もある。(4)わが国の特質を究明するために、62年度には社会事業成立期における、国家,地域,家族の関係を究明する。
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