1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61510091
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
大友 昌子 中京大, 社会学部, 助教授 (30060700)
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Keywords | 明治救貧制度 / 救貧法 / 恤救規則 / 窮民生活 / 府県救貧行財政 / 隣保相扶 / 福島県救貧行政,公的救済制度 |
Research Abstract |
明治以降、我国近代救貧行財政、社会事業行財政の展開と地方自治体、すなわち府県市町村レベルにおいて把握することを目的としている本研究作業は、すでに筆者が10数年に及ぶ関心と資料の集収を継続している作業である。 今回の研究費の交付に際しては、明治以降の救貧制度の柱となった「恤救規則」および府県レベルの救貧行財政に関わる行政文書を集収することは、従来の研究作業の手法と変更はない。 府県レベルの行財政資料を丹念に検討することによって、近代救貧制度の実像にせまることが今回の研究においても主眼となっている。 今回、明治42年度の福島県行政資料を検討することによって、次のような新たな知見を得た。 1つは、明治41年5月、内務省地方局長通牒「国費救助ノ濫給矯正方ノ件」によって、救貧財政の負担が国費より地方税へとその重点が移り、国費,地方費両者負担による救貧制度が成立してきたこと、これは新たな救貧体制を成立せしめる財政条件を準備する一段階となったであろうこと。 第2に、明治末期、福島県下の村および町に生活する窮民は、その生活保障の第1が「家」の構成員となることにあったが、次いで公的救済に依存する窮民が多く、大都市はもちろんであるが、町村においても、窮民生活は公的救済によって支持されねばならない社会状況が展開しつつあっったこと。第3に、我国近代救貧制度を支える社会的基盤が「隣保相扶」にあったことを行政資料を通じて明らかにし得たこと。 以上の諸点である。
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