1986 Fiscal Year Annual Research Report
紀元前7〜5世紀におけるイタリア諸民族間の諸関係の総合的研究
Project/Area Number |
61510184
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平田 隆一 東北大, 教養部, 教授 (00048779)
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Keywords | エトルスキ / ローマ / ラティウム / マグナ・グラエキア / カルタゴ / イタリア |
Research Abstract |
本年度の研究テーマとして(1)エトルスキ諸都市国家とローマ・ラティウムとの関係,(2)ローマとラティウムとの関係,(3)エトルスキとマグナ・グラエキアとの関係を設定し,このうち(2)については前5世紀におけるその関係の基盤となるいわゆる「カッシウスの条約」について,別記の如く論文を作成した。この研究から新しい知見が得られ,これに基づいて(1)及び(3)についても新たな展望が開かれた。即ち前493年ローマとラテン諸都市国家との間で結ばれたと伝えられる当該条約の条文を検討したところ,その二つの条項の表現が,前504年のアリキアの戦いのさいローマがとった態度を非難するアリキア人の文言中で用いられていることが判明し,これによって当該条約の眞正さが確認されるとともに,その条項の一つはまさにこの戦いでの経験をふまえて起草されたこと,従ってまた前5世紀のローマ・ラティウム関係の研究は,この対等条約を出発点とすべきことが明らかとなった。しかもこのアリキアの戦いは前506年ごろローマを攻囲・占領したエトルスキ都市国家クルーシウムの王ポルセンナの子アルンスがラティウムの都市アリキアを攻撃し,救援にかけつけたマグナ・グラエキアの僣主アリストデーモス麾下のギリシア軍に破れた戦いであり,問題の条約の締結がこの戦いと関連した以上,前6・5世紀のローマ・ラティウム関係は,単に両者の孤立した関係としてではなく,より広範な国際関係の中で捉えねばならず,(1)及び(3)における諸関係についても同様のことが当然考えられるのである。従って,すでに個別的に研究してきた上記諸民族間の政治・文化・経済・社会・宗教・言語における諸関係について,上記の新しい知見に基づく新しい観点から総合的に把握すること,そのさいこれら諸民族の中にカルタゴをも含めてその相互関係を追究することが,次年度の研究課題となるのである。
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