1986 Fiscal Year Annual Research Report
胎土分析による土器および陶器の移動・流通に関する基礎的研究
Project/Area Number |
61510197
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 芳裕 京大, 文学部, 助手 (90127093)
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Keywords | 土器の胎土 / 胎土組成 / 岩石学的分析 / 土器の移動 / 人の交流 / 文化の伝播 / 遠賀川式土器 |
Research Abstract |
本研究の中心は、縄文時代以降絶えず存在した物資の交流の中で、とくに土器の移動を明らかにすることにある。その目的のひとつは、生活に密着した土器の動きから人の移動を復原し、当時の文化の伝播の様子を知ることである。本年度の研究は、稲作農耕文化の東日本への伝播の状況を明らかにすることに重点をおいた。従来から弥生時代前期前半には、稲作農耕技術を伴なう文化の東限は、伊勢湾沿岸部と丹後地方とされていたが、近年この地域以東でも、この文化を特徴づける遠賀川式土器が、中部,関東,東北地方で発見されはじめている。とくに東北地方,秋田,青森県下からもこの種の土のルートも注目されはじめている。太平洋沿岸地域を含めて、これら東北地方での遠賀川式土器が、製作技法の模倣から生れたものか、人の手によって運ばれたものかを判別することを土器の胎土の分析からおこなった。 これまでに伊豆諸島新島の田原遺跡の遠賀川系土器は、搬入品であり、長野県林里遺跡の遠賀川系土器も、昭和59年科学研究費(奨励研究(A)の成果として、伊勢湾沿岸部から持ち運ばれた土器であることが明らかにできている。本研究では青森県下で出土した遠賀川系土器について製作地の同定を岩石学的分析によっておこなった。その結果三戸市松石橋遺跡や剣吉荒町遺跡出土の土器は、製作技法の模倣による在地の土器であることが判った。一方、八戸市是川中居遺跡の遠賀川系土器のうち、1点だけが搬入品であり、その製作地として日本海沿岸部では、最上川下流域,信濃川中〜下流域,糸魚川下流域,丹後半島周辺部である可能性が高いことが判明した。このようにして、稲作技術を伴なう弥生文化の東日本への伝播には、大きく2つのルートが認められた。次年度からは、これらの地域の遺跡での検証例を増して、より具体的な姿を復原することに努める。
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Research Products
(1 results)