1986 Fiscal Year Annual Research Report
直談系の中世法華経注釈書と説話・和歌など国文学諸分野との関係についての研究
Project/Area Number |
61510221
|
Research Institution | Osaka Women's University |
Principal Investigator |
広田 哲通 阪女大, 学芸学部, 講師 (00094459)
|
Keywords | 法華経注釈書 / 直談物 / 法華経鷲林拾葉鈔 / 法華経直談鈔 / 事理 / 義科 / 談義所 / 草木成仏 |
Research Abstract |
1.直談系の法華経注釈書の成立する場として、中世後期における談義所の実態を明確にすべく、埼玉県川越市の喜多院,中院を訪ね、十五,十六世紀の文書・史料類を閲覧整理し、また、叡山文庫天海蔵書中の義科抄群などの文献の奥書などから、関東天台及び畿内近国の談義所の所在、分布について整理した。 2.直談系の法華経注釈書のうち法華経鷲林拾葉鈔,法華経直談鈔を中心的な対象として、その注釈の方法が、理(理論的解説)と事(具体的事例の提示)とから成り、事理相応することによって、十全な法華経解説が可能であるという立場をとっていることを解析した。また、数多くの和歌や説話が、具体的事例の役割をもって採用されていることを指摘した。 3.法華経鷲林拾葉鈔や法華経直談鈔の内部において、直談の概念が明示されている個所を抽出し、一方これらの作品において、次のような内容は論義で扱う事柄であるので省くと言及する個所がしばしばあって、直談物と論義の質的差異が直談物の内部において明確に意識されていることを指摘した。 4.法華経鷲林拾葉鈔,法華経直談鈔における説話を抽出し、それらが該書の中でどのような役割をもって機能しているかを明確に位置づけることを試みた。 5.法華経注釈書の上記のような特質が他の直談物(観無量寿経,阿弥陀経,般若心経などの直談)においても通有のものであることを指摘し、直談物全体の論理構造の特色として位置づけることを試みた。 6.叡山文庫の天海蔵書を中心として、義科抄類を調査し、中でも草木成仏について、その論理構築のあり方,直談物との関係,説話・和歌がとりこまれる実態などについて考察した。
|
Research Products
(1 results)