1986 Fiscal Year Annual Research Report
近代沖繩思想史研究序説-アジア思想史との関連において-
Project/Area Number |
61520032
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
比屋根 照夫 琉大, 教養部, 教授 (10045172)
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Keywords | 沖縄の思想像 / 比較文化論 / ナショナリズム / 自由民権思想 / フィリピン独立運動 / 民族自決 / 国際交流 / 地域性 |
Research Abstract |
本研究は近代沖縄の思想史的位置を、日本思想史とアジア思想史の双方から照射し、それらの交錯領域としての"沖縄"の思想像を解明しようとするものである。このような問題意識にもとづいて本研究では、"日本"。"沖縄"。"アジア"の三地域を代表する思想家群像に着目し、それらの思想家群像の思想的結実を通じて"日本"と"アジア"とを架橋する"沖縄"の国際性・多面性・独自性へと照明をあてる方法がとられた。この作業を推進するため、科学研究費1年目の本年は、〓度にわたり東京に出張し、(1)末広鉄腸関係資料の収集(2)ホセ・リサールならびにアジア関係資料の収集発掘に従事した。この結果、末広鉄腸に関しては、フィリピン独立運動を素材とし、ホセ・リサールをモデルとした鉄腸の政治小説「南洋の大波瀾」(明24)成立前後の政治小説群、「雪中梅」(明18),「花間鶯」(明20),「鴻雪録」(明21),「唖之旅行」(明23),「明治四十年之日本」(明26)などを発掘し、それらの分析を通じて鉄腸の内政論,外政論の内的連関をほぼ解明することが可能となった。キセ・リサールについてもその著書など関連文献を収集したので、鉄腸・リサール両者をめぐる思想的交流を分析することも可能となった。この両者の思想的交流をめぐる最大の問題点は、鉄腸・リサールにおけるナショナリズムの共鳴・離反・相剋にあったと言える。鉄腸の「政治小説・南洋の大波瀾」におけるリサールのフィリピンへの共鳴は、明治20年代の日本のアジアへの正当な関心をよびさましたと同時にその結論部分におけるフィリピンの日本への併合は、日本のナショナリズムとアジアのナショナリズムとの離反・相剋の様相を如実に示したものだった。そして、両者のナショナリズムの共鳴・離反・相剋の諸様相に、次年度研究予定である沖縄の思想家伊波普猷の歴史認識・アジア認識を対比することで日本とアジアをめぐる交流のあり方が問われる。
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