1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61530024
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
尾高 煌之助 一橋大, 経済研究所, 教授 (90017658)
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Keywords | 機械工業 / 自動車部品工業 / 産業政策 |
Research Abstract |
1.5人の専門家に直接面接して機振法制定当時の事情や運営の実態等を聴取した結果、同法制定とその運営は、通産省と業界諸団体の緊密な協力の下に行われたことが明かになった。機振法の中心、生産設備の新規投資や刷新に対する(日本開発銀行と中小企業金融公庫による)資金の低利融資であるが、実際には市中銀行の協調融資が追加されるため、金額的にもかなり重要な効果を持ち得たものといってよい。通産省等の専門家から技術上の注意が与えられたり、具体的な機種の推薦が行われた場合もあった。 2.機振法の国会審議の状況につき、文書調査の報告を受けた。国会審議はごく簡単で、同法の成立(ならびに2回の延長の承認)にかくべつの困難はなかった。むしろ興味深いのは、当時、機振法の効力について制定者自身すら大きな期待は持たなかったことである。 3.機振法融資を受けた数社の事例研究を実施した。その結果によれば、機振法の効果は、その付加効果まで含めればすこぶる重要だった。ただ、ミクロ的な効果とマクロ的な効果とは自ずから別個であるから、これらの事例研究の成果をそのまますぐに一般化することは控えなくてはならない。 4.第2年度に検討さるべき仮説(例)として次の2点を考慮中である。 (1)機振法の機能とそれにもとづく通産省の産業政策の有効性とは、業界団体(例えば日本自動車部品工業会)の機動性と有効性にかかわる。ゆえに、業界団体の機能が劣る場合には産業政策の有効性もまた失われる。 (2)一般に、産業政策のない状態では「市場」が(人為的な介入なしに)機能したと想定しがちだが、これは必ずしも正しくない。機振法が成立したことによって、市場(とりわけ資本市場)の機能が強化された(あるいは可能となった)側面がある。そのかぎりにおいて、産業政策には市場競争創設的効果があった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 尾高煌之介,小野桂之介,足立文彦: "The Automobile Industry in Japan,A Study of Ancillary Firm Development" 紀ノ国屋書店, 300 (1987)