1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61530050
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Research Institution | Kyoto Bunka College |
Principal Investigator |
藤田 彰典 京都文短, その他, 教授 (10181348)
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Keywords | 大黒屋杉浦家文書 |
Research Abstract |
1.〔史料蒐集の実績〕各機関及び個人所蔵文書の蒐集に中心をおいた61年度では、京都・杉浦利之氏所蔵文書、滋賀県・坂江勝介氏所蔵文書、国立史料館所蔵文書、東京大学法学部法制史資料室所蔵の各文書を撮影し蒐集できた(CHA5判焼付10,738枚)。現在なお内容別に分類整理中である。2.〔史料検討及び口頭発表〕蒐集史料の内容別分類は(1)出自と系譜(坂江・内海両家を含む)(2)家憲及び店則、(3)店員雇用と別家、(4)石門心学関係、(5)京呉服20軒組(京都十仲間)、(6)呉服染(江州問屋)取引関係、(7)杉浦家婚礼・法要関係、(8)町組関係、(9)江戸店及び大三株式会社、(10)支店(岐阜・大阪・中国・その他)関係、(11)その他、である。 京の老舗大黒屋杉浦家は、4代の利喬をして始まる石門心学を経営理念とし、それが今日の経営のなかに継承されているところに特色がある。又、17世紀中葉に江戸での行商にその起りをもつ大黒屋は、江州高島郡居住の侍身分であって、江州商人の特徴をみせているが、1680年代には京店(仕入店)と江戸店(営業店)をもつ富裕商人に成長し、京呉服20軒組のメンバーとなった。そうした営業の発展は、大黒屋の店員雇用の方法にあったともいえる。大黒屋はその店員のほとんどを出身地の高島郡(農家)に求め、満期奉公店員のすべてを大黒屋別家に位置付けて、大黒屋と別家との人的関係を後々までも継承していくのである。その店員雇用・保証制度については、同志社大学人文科学研究所第2研究(産業化と雇用慣行の研究)において「京の老舗杉浦商店の店員規定」の論題で報告した(7月7日)。なお、明治期以降の日本資本主義発達過程における商家(老舗)経営の変質については、杉浦家日記(京都府立総合資料館蔵)によって、その経営理念の変貌が多少とも明らかになるものと期待している。
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