1986 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属ダイカルコゲナイド層間化合物の電子状態と物性
Project/Area Number |
61540235
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 直 阪大, 基礎工学部, 助手 (40029559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 和子 大阪大学, 基礎工学部, 教授 (90029413)
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Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / 層間化合物 / 電子帯構造 / APW法 / 強磁性 |
Research Abstract |
1T-Ti【S_2】に遷移金属Fe及びCoをインターカレートさせた【M_x】Ti【S_2】(M=Fe,Co;x=1,1/3)の非磁性状態における電子帯構造の計算並びに【Fe_x】Ti【S_2】(x=1,1/3)の強磁性状態における電子帯構造の計算が完了し、次のような重要な知見が得られた。 1.Fe及びCoの3d状態は、母体であるTi【S_2】の結合バンドと非結合バンドの間に、Sの3p及びTiの3d状態と混成したバンドを形成し、フェルミ・レベルはこの混成バンドのところにある。従って、Ti【S_2】の電子帯構造に基づいたいわゆるリジッド・バンドモデルを用いて【M_x】Ti【S_2】(x>1/3)の物性を議論することはできない。 2.上記の混成バンドの幅はかなり広く(【Fe_(1/3)】Ti【S_2】でやく2.7eV)、従って、Fe,Coの3d電子を局在モーメントのモデルで取り扱うことは不適当で、遍歴電子として取り扱うべきである。 3.FeやCoの3d状態とSの3p及びTiの3d状態との混成はx=1/3の場合でもフェルミ・レベル付近でかなり大きい。この混成は最近の光電子放出の実験により確認されている。 4.強磁性【Fe_x】Ti【S_2】の電子帯構造からFe,Ti,Sそれぞれのマッフィン・ティン球内における磁気モーメントを見積った結果、FeTi【S_2】で【μ_(Fe)】=2.17【μ_B】,【μ_(Ti)】=-0.4【μ_B】,【μ_S】=0.035【μ_B】、また【Fe_(1/3)】Ti【S_2】で【μ_(Fe)】=2.45【μ_B】【μ_(Ti)】=-0.08【μ_B】,【μ_S】=0.033【μ_B】という値が得られた。このようにFeのみならずTiにも磁気モーメントが、しかもFeのモーメントと反平行に誘起されており、FeTi【S_2】の強磁性状態は正確にはフェリ磁性と呼ばれるべきである。
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Research Products
(2 results)