1986 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電性物質におけるディスコメンシュレーションの動力学の実験的研究
Project/Area Number |
61540239
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
増山 博行 山口大, 理学部, 助教授 (20091209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠野 裕修 山口大学, 理学部, 教務員 (00183260)
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Keywords | 強誘電体 / 不整合相 / 整合相 / 相転移の動力学 / ディスコメンシュレーション / ピン止め / 緩和過程 |
Research Abstract |
強誘電体における不整合・整合相転移の動力学は、不純物や格子欠陥によるピン止め効果を被ったディスコメンシュレーション(DC)の生成・消滅過程として理解される。今年度の研究はまず、いわゆる硫安型物質の一つである【K_2】Zn【Cl_4】でDCの動力学を反映すると考えられる誘電率とX線衛星反射の同時測定を行い、相転移過程及び熱平衡状態への緩和の時間発展過程を実験的に明らかにした。その結果、以下のことが分った。 1.整合相から不整合相へ温度をジャンプさせた時誘電率が増加していく過程は、結晶中に出現した不整合相が整合相と共存した状態であり、初期過程は【e^(-t/5)】の時間依存性を示す。 2.そして誘電率が最大値に達する時に整合相は消え去り、以後の誘電率が平衡値に減少していく過程、及び、不整合相内で温度をジャンプさせた後に誘電率が平衡値に変化していく過程は、ともにその温度での熱平衡の間隔にDCが配列していく過程である。 3.その初期には誘電率とDC間隔はともに【e^(-〓!(t/t)】のように振舞うが、晩期には後者は【(lnt)^(-1)】のように極めてゆっくり変化し、これはKawasakiの理論を支持する。 4.不整合相から整合相へ温度をジャンプさせた時は、誘電率が最大値に達すると整合相が出現しはじめ、以後2つの相の占める比が除々に変化していく。 5.不整合相と共存している時の整合相はDCの完全に無い状態ではなく、DC間隔が桁違いに広い状態であって、時間とともにDCがさらに消滅(もしくは生成)している。このことはDCが6個単位で消滅(生成)しているとして理解できる。 また、同じく硫安型物質である【(N(CH_3)_4)_2】Zn【Cl_4】の高次整合構造の精密解析によってDCの微視的構造の決定を、【(N(CH_3)_4)_2】Mn【Cl_4】において分城壁として残留しているDCの分布の光学的観察なども行った。
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