1986 Fiscal Year Annual Research Report
固体水素表面および液体ヘリウム薄膜表面上の2次元電子系
Project/Area Number |
61540260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
家 泰弘 東大, 物性研究所, 助教授 (30125984)
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Keywords | 2次元電子系 / 鏡像力 / 固体水素 / 液体ヘリウム / 易動度 |
Research Abstract |
ヘリウム液面上の2次元電子系の研究は、これまでに電子結晶の観測など多くの重要な成果をもたらしてきた。ヘリウム液面上に実現し得る電子密度の上限は約【10^9】【cm^(-2)】であり、半導体界面における典型的な値【10^(11)】【cm^(-2)】〜【10^(12)】【cm^(-2)】との間には空白の領域がある。この密度領域の2次元電子系を実現するには液体ヘリウムに替えて、固体の誘電体表面を用いることが考えられる。 本研究では固体水素を用いて、その上に高易動度の電子系を実現する試みを行なった。固体水素は融点近傍における蒸気圧が比較的低く、アニーリングによって平滑な表面を得易いという特徴をもつ、結晶作成条件の最適化の努力を行なった結果、表面上の電子易動度として最高6.5×【10^4】【cm^2】/V.secという良好な値を得た。これは極めて良質の表面が作成されていることを示している。次にこの系にヘリウムガスを導入して行くと、まず圧力の低いところでは、表面に吸着されたヘリウム原子による電子散乱が現われ、易動度はヘリウム単原子層の積層を周期として振動的に変化する。更に圧力を上げると、吸着ヘリウム膜厚の増加とともに上記の散乱機構は表面波(リップロン)による散乱へと移行する。 一方、固体水素よりも誘電率の大きいLiFを基板として、その上に形成された液体ヘリウム膜上の電子易動度を測定した実験では、膜厚の減少とともに易動度はバルク表面の値から急激に減少することが見出された。この減少は、理論的に予想されている、基板からの強い鏡像力による自己束縛状態への遷移の前駆現象として解釈することが可能であるが、易動度の減少と有効質量の増加との対応関係について更に検討を要する。 本研究で明らかになった固体水素表面上の高電子易動度に基づき、電子密度を上げて行って、電子結晶の融解に関する量子効果を調べることなどが、今後の課題である。
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Research Products
(1 results)