1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61540265
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
利根川 孝 神戸大, 理学部, 助教授 (80028167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 勲 神戸大学, 理学部, 助手 (10030785)
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Keywords | 1次元量子スピン系 / 競合する相互作用 / 有限系の厳密解 / 基底状態における性質 / ダイマー型の長距離秩序相 / 有限温度における性質 / 量子転送行列法 / disorderd line |
Research Abstract |
本研究の第一段階として、ともに反強磁性的な最近接および第2近接相互作用を含む1次元格子上の量子ハイゼンベルグスピン系(スピンの大きさは1/2)を考え、この系の基底状態および有限温度における性質を調べた。 1.基底状態: 相互作用が等方的である場合について、スピンの数が20個までの有限系に対する厳密解を、系のハミルトニアンを対角化することによって求め、それらを無限系に外挿する方法を用いて、無限系の基底状態における種々の物理量を計算した。具体的には、基底状態におけるエネルギー,スピン相関関数,磁化曲線や、基底状態と第1励起状態との間のエネルギーギャップなどの相互作用定数依存性を、定量的に十分な精度で求めることが出来た。特に、第2近接相互作用の大きさを増していくとき、それが最近接相互作用の大きさの約0.3倍になるところで、エネルルギーギャップが零から有限になり、ダイマー型の長距離秩序が存在しない相から、存在する相に相転移が起こることが示された。現在、この計算を相互作用が異方的である場合に拡張している。 2.有限温度: 主に相互作用が等方的である場合について、鈴木-Trotter公式に基づく量子転送行列法を用いて、有限温度での系の内部エネルギー,比熱,スピン相関距離,スピン相関の距離による振動を特徴づける波数などを計算した。求められた内部エネルギーの値は、低温の極限で、1.で議論した基底状態のエネルギーの値に矛盾なくつながる。また、温度対第2近接相互作用定数平面上に、上述の波数の値がπからずれる領域を指定する曲線(disorderde line)が存在し、その曲線上でスピン相関距離に異常が起こることを見いだした。このことは、幾つかの古典競合系に対しては既に知られていることであり、量子系,古典系の如何によらずに、競合系に特有なことであると考えられる。
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Research Products
(1 results)