1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61540266
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 健 九州大学, 理学部, 助手 (10037187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 寿夫 九州大学, 理学部, 助教授 (50037222)
森 肇 九州大学, 理学部, 教授 (90037143)
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Keywords | 奇妙なアトラクター / 局所的軌道拡大率 / カオスの統計力学的定式化 / q-相移転 / テント写像 / ロジスティック写像 / ヘノン写像 / 散逸標準写像 |
Research Abstract |
当初の研究計画では、カオスの発生と構造の普遍的性質が、直接測定可能なカオス軌道のパワースペクトルによってどのように捉えられるかを解明するのが主な目的であった。幸いこれは順調に進み、前年度まででほぼ所期の目標を達することができた。一方、カオスの特徴や構造を違った面から捉える可能性のある2組の量が、1986年から1987年にかけて世界の2,3ヶ所でほとんど同時的に提唱された。奇妙なアトラクター上の特異な確率測度の多重フラクタル構造を表現するf(α)スペクトルと、カオス軌道の局所的拡大率Λのゆらぎのスペクトルψ(Λ)である。そこで前年度後半からはこれらの量によるカオスの構造研究に重点を移し、本年度は特にカオスの分岐点における局所的軌道拡大率の異常なゆらぎに焦点を当てて研究を進めた。成果の概要は次の通りである。 カオスの分岐点(バンド分裂点や諸種のクライシス点等)では、内在する不安定な不変集合(固定点、周期軌道、カントル集合)がアトラクターから分離したり、離れていた不変集合がアトラクターと合体したりしてアトラクターの大きさや性質が急に変わる。それに伴ってカオス軌道の局所的拡大率Λのゆらぎにも異常が現れる。Λと共役な量qを導入して統計力学と類似な定式化を行い、この現象が統計力学での相転移と類似の現象(q-相移転と呼ぶ)として捉えられることが判明した。具体的には、間欠性カオスを示す系をモデル化した区分的線形な一次元写像と非対称テント写像のバンド・クライシス点近傍では厳密な理論的計算によって、また、ロジスティック写像や正弦円写像、二次元のH'enon写像や散逸標準写像でみられるバンド分裂点や種々のクライシス点では数値実験によって、これらは示された。 前年度までの研究結果と総合すると、カオスの統計力学を第一原理から建設する大目標に、これらの成果は重要な足掛かりをつけたと思う。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 吉田健: 数理科学. 301号. 68-74 (1988)
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[Publications] Takehiko Horita.: Progress of Theoretical Physics. 80. 793-808 (1988)
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[Publications] Hiroki Hata.: Progress of Theoretical Physics. 80. 809-826 (1988)
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[Publications] Takehiko Horita.: Progress of Theoretical Physics. 80. 923-928 (1988)
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[Publications] Koji Tomita.: Progress of Theoretical Physics. 80. 953-972 (1988)
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[Publications] Koji Tomita.: Progress of Theoretical Physics. 81. 1-6 (1989)
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[Publications] Hiroki Hata.: Progress of Theoretical Physics. 81. 11-16 (1989)
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[Publications] Nobuyuki Mori.: Progress of Theoretical Physics. 81. 60-77 (1989)
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[Publications] Tatsuharu Kobayashi.: Progress of Theoretical Physics.
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[Publications] Koji Tomita.: Progress of Theoretical Physics.
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[Publications] Takehiko Horita.: Progress of Theoretical Physics.
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[Publications] Syuji Miyazaki.: Progress of Theoretical Physics.