1986 Fiscal Year Annual Research Report
能動素子集合系に対する非線形動力学的アプローチとその生体リズム現象解明への応用
Project/Area Number |
61540274
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
椎野 正壽 東京工大, 理学部, 助手 (60134813)
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Keywords | 非平衡系相転移 / 非平衡熱力学 / H-定理 / 揺動散逸定理 / クリティカル・スローイングダウン / 非線形フォッカープランク方程式 / マッキーンプロセス / リセプノフ・ファンクショナル |
Research Abstract |
熱平衡系における相転移の概念を拡張して、一般に非平衡系での相転移現象を研究する目的で、確率システムをとりあげ、分岐現象をあらわす確率モデルを構成し、その分岐現象にともなう系の動的な性質や異常性について研究を行なった。熱平衡系における相転移が熱力学的極限でのみ起こることに対応して、非線形確率微分方程式の無限結合系を扱かうことより様々な種類の分岐現象のおこることが明らかになった。大別すると2種類に分類されるのであるが、一つは熱平衡系の相転移と最も類似点があると考えられる、ポテンシャル系であり、分岐に伴なって生じる各エルゴーディク・コンポーネントが固定点型となるものであって他の一つはリミット・サイクル等の振動型のアトラクターを伴うより複雑で、一般には熱平衡系ではみられず生体系等の開放系においてみられるタイプの分岐現象である。第一の型のものは、対称性の破れに相当した相転移であり、ポテンシャルの形と相転移の型(一次,二次,及びその混合等)の関係等について明らかにすることができた。具体的には平均場無限粒子系確率過程モデルを記述する非線形フォッカー・プランク方程式の示す分岐現象をそれに伴う安定性の問題及びゆらぎの問題の二点からとらえて解析を行なった。 安定性については、H-定理が中心的役割を果し、リヤプノフの第二の方法といわれる非線形安定性解析を行なうことができた。この方法はプリゴゲン達の研究により発展した非平衡系熱力学と深い関連をもつものであり、系が平衡へ近接する過程についての知見が得られたことになるものである。 ゆらぎに関しては、揺動散逸定理の成立を証明し、これを用いて、オーダーパラメータゆらぎのスペクトラム,緩和時間の臨界異常等について多くの情報を得ることができた。
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