1986 Fiscal Year Annual Research Report
分子の高振動励起状態の動力学と化学反応に関する理論的研究
Project/Area Number |
61540321
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 重樹 東大, 教養部, 助教授 (20113425)
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Keywords | ポテンシャル面 / 反応動力学 / 無輻射遷移 |
Research Abstract |
分子の高振動励起状態の動力学は、化学反応を初め、分子の様々な動的過程に重要な役割りを果している。本研究では、この課題についての幾つかの研究プロジェクトの内、特に、光励起ベンゼンの無輻射遷移の機構について研究を行なった。多原子分子の無輻射遷移は、従来、コンドン近似に基づく取り扱いが多くなされてきたが、この取り扱いでは、現実の過程を十分理解し得るとは、いいがたい。本研究では、電子的励起状態と基底状態のポテンシヤル面の交差に注目し、surface hoppingとトンネル機構を統一的に記述する理論的モデルを作り、それに基づいて無輻射遷移の機構を論じた。先づ、多配置SCF法を用いて、ベンゼンの【S_1】及び【S_0】状態のポテンシャル面の計算を行ない、ベンゼンの光化学反応の反応中間体の一つと考えられているプレフルベンへ至る反応経路の途中で、【S_1】と【S_0】状態のポテンシャル面が交差することを見出した。次に、反応経路近傍のポテンシャル面を解析関数に表わし、反応座標及び最小作用トンネル経路を求めた。以上のポテンシャル面の情報と、新たに開発した理論モデルに基づいて無輻射遷移の速度を評価したが、S状態の過剰エネルギーが5000【cm^(-1)】以下では、トンネル機構、それ以上では、surface hopping機構で反応が進行することが分かった。従って、ベンゼンのS状態からのケイ光の3000【cm^(-1)】近傍での急速な減衰はトンネル機構による無輻射遷移が顕在化することによるとの結論を得た。上述の研究テーマの他、高振動励起状態にある【CS_2】分子のAr原子による衝突緩和についての研究も行なった。本年度は、【CS_2】とArの相互作用ポテンシャルについての計算を行ない、解離極限近傍でも記述できる相互作用ポテンシャルを得た。現在、動力学に関する研究を実行中である。
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Research Products
(2 results)