1986 Fiscal Year Annual Research Report
金属核NMRを用いた状態分析法の開発.平衡系にある多種化学種の同時定量
Project/Area Number |
61540433
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
宗像 恵 近大, 理工学部, 教授 (80090942)
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Keywords | 【^(113)Cd】NMR / 固体NMR / イミダゾール錯体 / 化学交換反応 / 状態分析 / キャラクタリゼーション / 金属NMR |
Research Abstract |
(1)0.5MCd【(C10-4)-2】と1.5Mイミダゾールを含むメタノール溶液の【^(113)Cd】NMRシグナルは室温では一本のシグナルしか与えない。これを-20℃すると幅広いシグナルとなり、-50℃では二本のシグナルを与え、-70℃以下ではその化学シフトは一定であった。このことより、-70℃以下ではCd化学種間の化学交換反応はNMRタイムスケールより遅くなることを明らかにした。 (2)各種溶媒中におけるCd【(C10-4)-2】の【^(113)Cd】NMR化学シフトは【^(67)Zn】(ZnC1【0_4】を使用)のそれと極めてよい相関性を示し、【Cd^(2+)】-溶媒相互作用は【Zn^(3+)】-溶媒相互作用に極めて類似していることが明らかにされた。(3)Cd【(biL)_3】{biL=2,2'-ビピリジン、1,10-フェナントロリン及びその誘導体}の固体【^(113)Cd】NMRを測定することに成功した。これら錯体の溶液中の【^(113)Cd】NMRの化学シフトは、固体【^(113)Cd】NMR化学シフトと誤差範囲内で完全に一致するという極めて注目すべき結果を始めて見出した。この結果は溶液中における溶媒効果・アニオン効果,及び固体におけるパッキング効果は〔Cd【(biL)_3】〕【(C10-4)-2】の構造にほとんど影響を与えないこと、及び従来固体の構造研究手段としてはX線結晶構造解析法が用いられていたが、固体NMR法も極めて有力な手段となりうることを示した点で注目される。 (4)エタノール溶媒中においてCd【(C10-4)-2】とイミダゾール(=im)をモル比1:1から1:6まで変化させ、-90℃で【^(113)Cd】NMRスペクトルを測定し、【Cd^(2+)】,【Cd(im)^(2+)】,Cd【(im)^(2+)-2】,Cd【(im)^(2+)-3】,Cd【(im)^(2+)-4】,Cd【(im)^(2+)-5】,Cd【(im)^(2+)-6】の7種のシグナルをすべて観測することに成功した。さらに各ピーク面積からこれら7種の存在量を決定することに成功した。このように【^(113)Cd】NMR法を用いて、平衡にある多種化学種を非破壊的に簡便にキャラクタリゼーション出来るという画期的な方法が示された。今後、金属核NMRはますます有力な手段として利用されることが期待される。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 宗像惠,北川進,八木富士夫: Inoganic Chemistry. 25. 964-970 (1986)
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[Publications] 宗像惠,北川進,佐々木学: Inoganica Chimica Acta,. 120. 77-80 (1986)
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[Publications] 斉藤肇,森島績 編,宗像惠・北川進: "高分解能NMR-基礎と新しい展開-" 東京化学同人, 40 (1987)