1986 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトな金属中心とハードな塩基の協同によるC-H結合の活性化
Project/Area Number |
61540448
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
桶矢 成智 和歌山大, 教育学部, 教授 (00031815)
|
Keywords | C-H結合の活性化 |
Research Abstract |
[M【acac_2】](M:Pd【II】,Pt【II】,acac:アセチルアセトネート)と2倍モルのPPh3をMeOHに溶解してできる【[M(acac)(PPh_3)_2]^+】【acac^~】は、外部試薬のC-H結合を活性化し、新物質を含む多くの錯体合成の良い出発物質となることを見出した。たとえばアルキルスルホニルアセトニトリルやアセチレン類との反応では[M(acac)(-CH(【SO_2】R)CN)(【PPh_3】)]および[M【-CΞCR_2】【(PPh_3)_2】]が生成した。acacHのpKaが89であるのに対し【RSO_2】【CH_2】CNとRCΞCHのpKaはそれぞれ12,21〜26と大きいにもかかわらず反応が進行するのは、(1)基質が金属と相互作用することによりそのpKaが低下し、かつプロトンアクセプター【acac^~】がすぐそばにある。(2)プロトン引き抜きのエネルギー的不利を補って余りある生成錯体の熱力学的安定性,(3)生成錯体が溶媒に溶けず固体として析出して平衡系外にでる。の三点の理由によると考えられる。2-ヒドロキシアセトフェノン類(pKa【CH_3】:〜20,OH〜9)との反応ではができるが、この場合さらにキレート効果が反応進行の理由に加わる。他方[M【acac_2】]と2倍モルの1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン,dppm(pKa29)との反応ではdppmのメチレンが活性化され、[M【dppm-H_2】]ができた。Ptの場合、【^(31)P】nmrで反応を追跡し、[Pt-(acac-O,O´)(acac-O)(dppm-P)]と[Pt(dppm)(dppm-H)](acac)が反応中間体として存在することを見出した。一方Pdでは等モルのdppmとの反応で[Pd(acac)(dppm-H)]が単離され、これと【T_S】OHとの反応では[Pd(acac)(dppm)](O【T_S】)ができた。以上より反応全体は、[M【acac_2】]【(dppm)!→】[M(acac-O,O´)(acac-O)(dppm)]→[M(acac)(dppm)](acac)【(-acacH)!→】[M(acac)(dppm-H)]【(dppm)!→】[M(dppm)(dppm-H)](acac)【(-acacH)!→】[M【dppm-H_2】]のように進むと推定される。PdとPtで反応の安定中間体が異なることは興味深い。以上のように、強アルカリ条件や、低酸化数の錯体への基質の酸化的付加が必要な合成でも、ありふれた錯体[M【acac_2】]を用いて容易にできることを見出し、その反応機構についても調べた。
|
-
[Publications] 橋本浩昌,中村幸雄,桶矢成智: Inorganica Chimica Acta. 120. L25-L26 (1986)
-
[Publications] 橋本浩昌,中村幸雄,桶矢成智: Inorganica Chimica Acta. 122. L9-L11 (1986)