1986 Fiscal Year Annual Research Report
新しいキラル遷移金属錯体によるチトクロムC及びb5の基質立体選択的電子移動反応
Project/Area Number |
61540451
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
榊 茂好 熊本大, 工学部, 助教授 (20094013)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 宏一 熊本大学, 工学部, 助手 (90174672)
|
Keywords | キラル遷移金属錯体 / チトクロムC / 電子移動反応 / 基質立体選択 |
Research Abstract |
還元型チトクロムC(cyt 【C^(II)】と略す)と各種遷移金属錯体との電子移動反応は広く知られているが、基質立体選択性発現の報告は皆無である。本研究では、初めて、cyt 【C^(II)】とコバルト(【III】)錯体との基質立体選択的電子移動反応に成功した。基質立体選択性は、イオン強度,pH,反応温度に対し興味深い依存性を示し、又、その依存性はコバルト錯体の性質により大きく変化した。親水牲アニオン錯体【[Co(edta)]^-】、(edta=エチレンジアミンテトラアセテート)では、基質立体選択性は、イオン強度増大と共に増加した後高イオン強度では減少に転じる。しかし、疎水性中性錯体Co【(acac)_3】(acac=アセチルアセトナート)では、イオン強度増大と共に選択性はわずかに減少した後、増大に転じる。この変化は、イオン強度増大によるcyt 【C^(II)】の活性部位近傍の構造変化によるものである。pHを7から4へ低下させると、【[Co(edta)]^-】、Co【(acac)_3】共に反応速度の増大と共に選択性はpH5以下で急激に増加する。モデル錯体として、新しいキラルポルフィリン亜鉛錯体を合成し、これらコバルト錯体との電子移動反応を行なったが、基質立体選択性は見られたものの、選択性のpH依存性は、わずかであった。従って、チトクロムCとの電子移動反応における選択性のpH依存性は、アミノ酸残基、例えば【pK_(R′)】4.2のグルタミン酸のプロトン化による水素結合切断が引き起こしたcyt 【C^(II)】の構造変化によるものであると言える。反応温度を25℃から60℃まで変化させたところ、【[Co(edta)]^-】では、選択性は増大し、40℃付近で最大となった後、減少したが、Co【(acac)_3】では、逆に、40℃付近で最小となった後、急激に増大する。この選択性に対する温度効果は、モデル錯体における選択性への温度効果と全く異なる特異的なもので、温度上昇によるcyt 【C^(II)】疎水性活性部位の水系への露出によるものである。以上のように、基質立体選択性から、cyt 【C^(II)】活性部位の構造変化に対し、新しい知見が得られた。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 榊茂好: Journal of America Chemical Society.
-
[Publications] 榊茂好: Journal of Chemical Society,Chemical communication.
-
[Publications] 榊茂好: Journal of Chemical Society,Chemical Communication.