1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61540474
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 幸丸 京大, 霊長類研究所, 助教授 (20025349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 梅代 京都大学, 霊長類研究所, 教務技官 (30109087)
森 明雄 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (50027504)
大沢 秀行 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60027498)
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Keywords | ニホンザル / 採食生態 / 社会構造 / 採食量 / 採食速度 / 採食空間 / 採食時の個体間関係 |
Research Abstract |
宮城県金華山,大分県高崎山,宮崎県幸島の3カ所において、ニホンザルの採食戦略に関する野外調査を行なった。各調査地では主に個体追跡による観察法を採用し、食物の種類,採食方法,採食速度,採食時の個体間関係,活動リズムなどに関する資料を得た。 1.金華山では食物の減少する冬期の採食戦略に焦点をあてた。サルは採食パッチの数を増加させたり、時間を延長することにより、採食効率の低下による総採食量の減少に対処していることがわかった。冬期の1日の活動時間に占める採食時間の割合が73%にもなる。この数値は暖温帯での約2倍に相当する。採食植物の栄養分析から、蛋白質の摂取の方がカロリーの摂取よりも、採食戦略により重要な影響を与えていることが示唆された。 2.非常に大きなポピュレーション・サイズをもつ高崎山群では、メスの社会的地位と餌場における採食量との関係を調べ、優位個体が劣位個体より多くの食物を得ていることが明らかになった。順位差と人工餌摂取量との相関を求め、林内での自然食物の摂取量と社会的地位との関連を明らかにする調査を進めている。これらの結果をもとに、非常に大きな集団を維持してゆくうえで、餌場の果たしている役割と、性・年令・社会的地位をもとに分類したクラス間の餌をめぐる関係を明らかにすることができる。 3.(1)幸島では個々の採食樹によって形成される食物パッチ内での個体間の相互交渉の観察から、サルは自分のごく身近な空間への他個体の侵入は許容しないが、その外側は伴食をする個体の組み合わせに血縁関係や優劣などの社会的関係がほとんど影響しない許容的採食空間をなしていることが明らかになった。(2)餌量の変化に伴なう個体の体重の増減と性成熟、初産年令との関係を求め、採食行動と繁殖成功度との間に個体の成長量に関するパラメーターを介在させた分析を進めている。
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