1986 Fiscal Year Annual Research Report
下等植物の無性生物群における種の認識法の一試行:単細胞性紅藻を用いて
Project/Area Number |
61540496
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
原 慶明 筑大, 生物科学系, 講師 (60111358)
|
Keywords | 単細胞性紅藻 / 無性生物群 / 系統分類 / 微細講造 / 光合成色素組成 / フィコビリン / Porphyridium / Rhodella |
Research Abstract |
無性生物群の対象として選んだ単細胞性紅藻を独自に天然から単離することと、世界各国に保存されている培養株を譲受し、5属11種15株を入手・確立した。その中の1種は石垣島名蔵川河口マングローヴ林内の土泥サンプルから単離したものであるがRhodella属の新種であることが判明した。この新種記載と属のcircumscriptianについては日本植物学会鹿児島大会で報告した。そして現在新種記載の論文を作成中である。 確保した藻株全てについて、従来行なわれてきた分類法に則り、光顕レベルの形態的特徴と同定の再確認を兼ねた観察を実施した。同時に電顕レベルの微細構造的特徴も実施した。これらの結果に基づき、各属・各種間の相互関係を整理し、4つの系統群と1つの祖先型プール群に識別する仮説を設定し、以降の実験を行なった。 これらの系統群内外の関係をより明らかにするために、これらの光合成色素組成の分析を行なった。とくに補助色素であるフィコビリンとカロチノイドに注目した。その結果、第1系統群(Rhodella maculataを代表とする)はB-フィコエリスリン、第2系統群(Rhodospora sordida)はC-フィコエリスリン、第3系統群(Cyanidium caldarium)はフィコエリスリンを欠き、第4系統群(Rhodosorus Marinus)はB-フィコエリスリン、第5の祖先型プール群(Porphyridium purpureum)は上記4群全てのタイプのフィコエリスリンをもつことが判った。第1と第4系統群は同じタイプのフィコエリスリンであるが、前者は眼点様類粒を有するが、後者はそれを欠くことから、カロチノイド系色素の分析も併せて実施した。結果は検討中である。本年度は微細構造面では葉緑体とピレノイドに着目し、物質面では光合成色素組成を分析した。次年度は細胞・核分裂の構造面と、体構成蛋白質の2次元電気泳動の解析、アイソザイムパタンの解析など遺伝的側面のデータの集積に努力する。
|