1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61540521
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岩尾 康宏 山口大, 理学部, 助教授 (10144916)
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Keywords | 両生類 / 受精 / 精子 / 受精電位 / 多精防止 |
Research Abstract |
本年度中は、研究計画にそって、無尾両生類(カエル)と有尾両生類(イモリ)における、正常受精と交雑受精にみられる卵のイオン透過性の変化を主として、イオン置換法とイオンチャンネル阻害剤を用いて検討した。カエル卵では、成熟卵において以前まで観察されていた受精電位の発生の前に、新らしいスパイク様の電位が最初に認められた。このスパイク電位は、受精電位と同様に、【Cl^-】や【1^-】のようなハロゲンイオンの卵細胞膜透過性の増加により生じることが外液のイオン置換により明らかになった。さらに、未成熟卵においてみられる多精受精時には、同様の性質をもつスパイク電位が、卵への進入精子数によく一致してみられた。これは、この電位の発生が精子に依存した反応である可能性が大きい。また、カエル卵とイモリ精子の友雑受精時には、このようなスパイク様の電位は、全く観察されなかった。それとは反対に、ゆっくりとした過分極様の電位が、受精電位の発生の前に認められた。これは、ハロゲンイオンのような負イオンによっているものではなく、【Na^+】のような正のイオンの卵細胞膜透過性の増大によっていることが明らかになった。これも精子依存性の反応であることを強く示唆している。 最近になり、これら以外に注目すべき実験結果を得ることができた。その1つは、成熟卵の受精電位の発生が、ハロゲンイオンチャンネル阻害剤であるDIDSやSITSにより完全に阻害されることが明らかになり、精子自身の電位反応と区別して検討することが可能となった。第二には、イモリ精子からカエル卵を付活し、受精電位を誘起する物質の単離し、バイオアッセイする系を確立することができた。これは、精子が卵付活と受精電位を発生する機構を物質レベルで解明するための糸口となると思われ、現在、これらの反応を、イオン電流変化の解析により詳細に知らべるため、膜電位固定法を用いて実験を継続している。
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